こちらの記事は次のようなことを知りたいという方に向けて書いています。
- 仮想通貨を購入し始めたけど、税金がかかるタイミングはいつ?
- 仮想通貨で儲けが出た場合、税金がかるのは日本円に換金した時?それとも現金を受け取った時?
- 仮想通貨の取得パターンごとに収益を認識するタイミングを知りたい!
今回は仮想通貨にかかる税金の話で、いつ収益として認識するかというお話です。誤った認識をしてしまうと、確定申告のタイミングや金額を謝ることがありますので気をつけましょう。
仮想通貨の収益は雑所得として認識
仮想通貨による収益は所得税法上の雑所得して認識します。これはこちらの記事で詳しく説明していますので、よろしければご参照ください。
雑所得は総合課税・累進課税・損益通算禁止・損失の繰越控除禁止といった特徴があり、簡単に言うと大きくは儲けづらい所得かな、という印象です。最大税率は所得税45%+住民税10%=55%となり、儲けの半分以上を税金で取られてしまいます。
分離課税で課税されるため20%強の税率、かつ損失を繰り越せる株式投資などと比較して、投資としては考えると不利な部分が大きいです。
仮想通貨投資はボラティリティー、つまり価格変動の度合いが高いため、魅力が大きいとも言えますし、危険(単にリスク=変動要素が高いというのではなく文字通り危ない)な投資とも言えます。ニュースなどでも取り上げられていますが、ビットコインは2021年5月8日現在、ここ1年で6倍以上に値上がりしています。もっと前の期間まで遡れば数百倍、数千倍といった価格変動です。
そもそも、所得税の最高税率は4千万円以上の所得にならなければ到達しないわけですし、少額投資ならばそれほど困ることはないでしょう。そのため、私もマイニングにトライしていくつかの仮想通貨を少額で保有することを考えています。
そのためにも、購入した場合の収益にかかる税金については知っておきたいですよね。以下、解説します。
7パターンの仮想通貨取引の収益計上タイミング
仮想通貨は、取得方法によって収益の計上タイミングと取得金額の評価が異なります。ここでは7パターンの仮想通貨取得方法について解説していきます。
なお、このマイニングの収益計上タイミングについては、国税庁のこちらの文書をもとに解説しています。
暗号資産に関する税務上の取扱いについて(情報)(令和2年12月18日)
マイニングで仮想通貨を取得した場合
マイニングで報酬として仮想通貨を取得した場合は、取得した時点で損益を認識します。一方で、マイニングの際にかかったパソコンの購入費用や電気代は経費として計上することが可能ですので、
マイニング時点の仮想通貨の評価額 - マイニングにかかった費用
が所得として扱われます。マイニングの収益計上についてはこちらの記事で詳しく解説しています。
仮想通貨を売却した場合
仮想通貨を売却した場合は、仮想通貨を売却した時点で損益が発生します。
仮想通貨を売却したときの売却価額 - 仮想通貨を取得したときの取得価額
が損益となります。売却行為そのものが課税対象になりますので、取引所に入金後、現金を引き出す際には当然ですが課税されません。これは、株式の売却でも同じですね。証券口座に入金される時点で課税されており、銀行口座に入金する時点ではただの資金移動ですので課税されません。
仮想通貨を保有していて、時価が上昇して含み益が出ている場合も、それだけでは当然課税対象にはなりません。株式でも同じですが含み益の時点では収益認識されません。あくまでも利益確定、つまり売却をした時点で課税されます。
仮想通貨同士の交換をおこなった場合
こちらは誤解されているパターンが多いようですが、仮想通貨同士を交換した場合は、その時点で収益を認識します。例えば、ビットコインをイーサリアムに交換するような場合です。
仮想通貨同士の交換の場合、取引所でそのまま交換すると認識するのではなく、上記の例ではビットコインを一度日本円など法定通貨に換金し、その日本円でイーサリアムを購入するという扱いになります。
その時点でビットコインが日本円に換金されている、つまり売却されているわけですから、仮想通貨を売却した場合と同様に、
交換先の仮想通貨の取得価額 - 交換元の仮想通貨の取得価額
で損益を認識することになります。
仮想通貨で決済をした場合
仮想通貨は資金決済に関する法律(資金決済法)の規定にもありますが、「不特定の者に対して、商品の購入やサービスの提供の対価としての代金の支払いに使用できる」という特徴があり、決済に使用することができます。
有名なところではビックカメラやコジマ、ソフマップなどで使えますね。
さて、仮想通貨で決済をした場合の税金はどう考えればいいでしょう?これも仮想通貨同士の交換と同じように考えればいいですね。仮想通貨で決済する場合、仮想通貨を日本円に換金して、それを支払っていると考えればいいのです。つまり、
商品、サービスの購入代金 - 決済に使用した仮想通貨の取得価額
を所得額として認識することになります。
仮想通貨の売却、交換、決済に使う場合のいずれも、上記国税庁文書では取引所での取引に限定していません。つまり、個人間で仮想通貨を売却したり、お互いに仮想通貨を交換したり、物の売買に使用したりした場合であっても、上記のタイミングで収益を認識することになります。
エアドロップで仮想通貨を取得した場合
エアドロップ(Airdrop)とは、空から降ってくるという意味です。仮想通貨の世界では、知名度向上などを目的として無償で仮想通貨を配布するイベントがおこなわれることがあります。かつてはビットコインキャッシュなどもエアドロップの対象となっており、最近でも様々な仮想通貨でエアドロップが実施されています。
このエアドロップでは、無償で入手している訳ですから、基本的に取得した時点で収益を認識します。ですが、エアドロップがおこなわれる仮想通貨は、新規発行でまだ知名度が低いものが多いため、市場価格がついていないものもあります。そのため、
- 市場価格がある場合:入手した時点の仮想通貨の評価額を収益として認識
- 市場価格がない場合:取得価額はゼロのため収益はゼロ
となります。当然ですが、取得時点では収益がゼロだったとしても、売却した時点では収益を認識します。
ハードフォークによって新しい通貨を取得した場合
難しそうな言葉ですが、ハードフォーク(Hard Fork)というのは、Weblio英和辞典によれば、「システムの仕様変更に伴う分岐(派生システムの登場)が、新旧で互換性のない形でおこなわれること」ということになります。
仮想通貨の世界では、ハードフォークがおこなわれると、従来のものとの互換性がなくなるため新しい仮想通貨が誕生します。ビットコインの場合は、ハードフォークを繰り返したことで、ビットコインキャッシュ、ビットコインゴールド、ビットコインダイヤモンド、ビットコインシルバーなどの新通貨が誕生しています。
このハードフォークには2パターンあり、それぞれこのようになります。
- 合意形成がとれたパターン:分岐した2つの仮想通貨の一方が実質的に消滅する
- 合意形成がとれなかったパターン:分裂した2つの仮想通貨がどちらも存続する
この分裂に関しては、分裂時点では市場価格がありません。そのため市場価格のないエアドロップと同じような考え方になります。つまり、
取得価額はゼロのため収益はゼロ
となります。売却等したときに収益を認識すればいいということですね。
ステーキングの報酬によって通貨を取得した場合
また難しそうな言葉が出てきましたね。実質的にはマイニングと同じように考えてもらえればいいのですが、理解のために言葉の説明をしておきます。
ステーキング(Staking)というのは、仮想通貨をウォレットに入れたままにして、ブロックチェーンのネットワークをサポートすることで、報酬を得ることができる仕組みです。
2020年1月に仮想通貨取引所のコインチェックで、Liskを対象としたステーキングサービスを開始しています。
当然ながら、市場価格のある仮想通貨を得ることになりますので、ステーキングの場合も、入手時点の時価評価が収益となりますね。
ステーキングで得た時点の仮想通貨の評価額 - サービス利用等の費用
が、ステーキングによる所得となります。
まとめ
ここまで仮想通貨取引ごとの収益認識タイミングと評価額を解説してきました。以下、まとめます。
- 仮想通貨を売却した場合には、その時点で収益を認識する。現金を払い出したかどうかは関係ない
- 仮想通貨同士の交換や商品の決済に仮想通貨を使用した場合、一度日本円等に換算したと考える。そのため、その時点で換金したものとして収益を認識する
- マイニング、ステーキングで収益を得た場合は、取得時点の時価評価額から経費を差し引いたものを収益として認識する
- 取得時点で市場価格のない仮想通貨はゼロと考える(もちろん売却等したときには売却額ー0が収益となる)
以上です。仮想通貨は、取得した時点の時価で評価することと、現金に変えなかった場合でも売却として取り扱われ収益認識が必要な場合があることに気をつける必要がありますね。
ここまでお読みくださいましてありがとうございました。