こちらの記事は次のようなことを知りたいという方に向けて書いています。
- 日商簿記検定1級の合格体験記が読みたい!
- 日商簿記検定1級に短期合格するための戦略を知りたい!
- 日商簿記検定2級に合格したけど、1級は受けるべき?
日商簿記検定1級に合格したのは20年以上前ですが、仕事は経理業務に従事しており、日商簿記検定1級の内容は合格後もアップデートしています。今回は私が日商簿記検定1級に合格した際の合格体験記を書きますね。
日商簿記検定1級の合格証と得点
説明への説得力を持たせるために、私の日商簿記検定1級の合格証と得点をアップしておきます。
申し訳ないのですが、マイナーな場所で受験したため、どこの商工会議所で受験したかは表示しておりません。
点数ですが、
商業簿記: 11点
会計学: 16点
工業簿記: 25点(満点)
原価計算: 25点(満点)
合計: 77点
工業簿記・原価計算は満点での合格です。
この試験は、約2ヶ月の学習で合格したのですが、短期間合格のための作戦がバッチリはまった試験となりました。
ちなみに、東京商工会議所で受験した場合、合格証に自分の写真が貼り付けられ割り印が押されるそうです。私が友人から見せてもらったものや、私のビジネス実務法務検定1級の合格証はそうなっていたので恐らくそうなのだと思います。
ですが、私が日商簿記検定1級を受験した商工会議所は写真の貼り付けはしていませんでした。嘘の合格証ではありませんので、ご了承ください。
受験を志したきっかけ
私が日商簿記検定1級を受験したのは、社会人1年目の6月でした。
なお、経理部門で働きたいと思っていたため、大学時代に日商簿記検定2級までは取得していました。
4月に入社した際の研修で、「入社をきっかけに何か一つ目標をもって取り組みなさい」といったことを外部講師に言われ、各人が同期入社の仲間を前にして目標の宣言をする、という機会がありました。
そのとき私は、日商簿記検定1級のテキストだけは購入しており、試験が6月にあることは知っていましたので、「日商簿記検定1級に合格します!」と宣言してしまいました。
正直な話、日商簿記検定2級には1週間程度の学習期間で合格していたため、それくらいあれば大丈夫、とか勝手な想像をしていたのですが、後から日商簿記検定1級のレベルがどれだけ2級とかけ離れているかを知り、驚愕しました。
試験研究
私が資格試験をおこなう際に実施するのが試験研究です。
これは、資格試験の参考書や過去問などを見て、どのような学習をすれば最も効率的に学習を進められ、一発合格の可能性を高めて高得点で合格できるかを考えます。
ただ、ここでは当時の情報はいくらなんでも古すぎますので、最新の情報も交えてご説明します。
試験の概要
試験は年2回、6月と11月におこなわれます。2級・3級は2月にも試験がありますが、1級は年2回しか受験のチャンスがありません。
日商簿記検定1級は4科目で構成されています。
試験時間の区分けは90分ごとの2回となりますが、最初の90分で商業簿記と会計学、その次の90分で工業簿記と原価計算を解くことになります。
試験は午前9時から開始なので、朝イチで全力を発揮できるだけの状況にしておかなければなりません。
なお、試験範囲は非常に広く、2級・3級の内容に加え、細かくマイナーな分野や難易度の高い分野が追加されていきます。
商業簿記・会計学については2級で連結会計をある程度学びますので、1級との差は縮まってはいますが、それでも大幅な出題範囲の差がありますし、工業簿記・原価計算についてはCVP分析や差額収支原価分析など、経営実務的な内容を含んでいくことで、難易度が上がります。
出題区分は以下のリンクで確認が可能です。
日商簿記検定出題区分表
学習量
この日商簿記検定1級の場合、いつか受けようと思ってテキストだけは購入していました。1級のテキストは、当然といえば当然ですが2級合格者を対象としており、2級の知識がある前提で書かれているものが多いです。
それでもボリュームは相当なもので、商業簿記・会計学で3冊、工業簿記・原価計算で3冊の計6冊という量でした。
2級は1冊のボリュームが1級の半分くらいのテキストが2冊で合格していたので、ページ数だけでも、少なくとも6倍位の学習量はあると言えそうです。
前述のとおり、私の場合の学習時間は、日商簿記検定2級で1週間、1級で2ヶ月(8週間)でしたので8倍の時間と言えます。ただ、2級受験時は大学生であり、試験休み期間中を利用して勉強しましたので、1日で使える時間は社会人の1級受験時よりは多かったはずです。
現在の試験学習時間としては、
3級:100時間
2級:300時間
1級:600時間
だそうです。2級は2016年度から3年間にわたって、試験範囲が大幅改定されましたので、その影響もありそうです。試験制度改定前ならば2級の学習時間は200時間程度くらいだったでしょうか。
難易度
正直な話、あらゆる級別試験に言えることですが、3級→2級→1級とステップアップする場合、受験者の質は上に行くほど上がっていきます。
試験そのものの合格率は、3級40~50%、2級20~30%、1級10%程度ですが、受験者の質そのものが3級や2級と異なるため、実際は合格率以上の難易度になってきます。
ご参考まで、日商簿記検定1級の受験者、合格率情報を記載します。
日本商工会議所 日商簿記検定1級受験者データで参照できるものに加え、私が過去集計していたデータを公開します。
おおむね10%程度の合格率となっています。これは、日商簿記検定1級試験は合格者数を一定のレベルに保つために、得点調整をおこなって、10%程度の合格率を維持するようにしているようです。
たまに3.5%とか、5.9%とか低い回がありますね。試験委員が変わると突然試験のレベルが変わり、低合格率を記録することがあると聞きます。
第84回の合格率は記録的な低合格率であり、1.9%でした。このときも試験委員の交代があったそうです。
また、25年位さかのぼってみるとわかりますが、申込者数が3万人ほどいたのが、現在では1万人くらいになっていますね。少子化だけが原因だとは思えず、会計の不人気というのも現実になっているのかもしれません。
試験対策
私が受験した当時、試験研究の結果から日商簿記検定1級の攻略法を以下のように導きました。
商業簿記・会計学⇨仕訳ミス・計算ミスを1つもしないためにはある程度時間をかけて、徹底的な練習が必要。その時間が取れないため、できる限り幅広く理解して足切りにならないよう耐える
工業簿記・原価計算⇨計算ミスが大失点を招く可能性があるため、理解をしっかりと深め、力不足の商業簿記・会計学を補うべく基本的に満点を狙う
色々な考え方や、自分がどの科目が得意か、ということによって作戦は変わりますが、私は得意な工業簿記・原価計算に注力しました。
結果的にはこれが短時間合格の秘訣であったと考えます。社会人で2ヶ月の学習時間では、商業簿記・会計学を完璧に仕上げるのは非常に困難であると考えます。
とはいえ、合格率10%の試験、かつ周りはレベルの高い受験生ですので、かなりリスキーな作戦となってしまうかもしれません。
実際の学習
商業簿記は見た瞬間仕訳が頭に浮かぶレベルは必要
試験の学習法としては、私の場合は前述のとおり、商業簿記・会計学を抑えつつ、工業簿記・原価計算を完璧にすることを目標に学習しました。
とは言っても、商業簿記・会計学で足切りにあってしまってはどうしようもありませんので、網羅的に学習をする必要はありますし、演習時間もしっかりと取る必要があります。
日商簿記検定1級の学習は、私の場合はテキスト6冊+大原簿記学校の模擬試験3回分を使って独学でおこない、一発合格することができましたが、オンライン講座や、資格スクールを利用するという方法も十分考えられると思います。
2級くらいまでなら、正直暗記だけでも運が良ければなんとかなるかもしれませんが、1級は暗記するだけでは対策としては不十分で、特に商業簿記については問題文を見た瞬間に仕訳が頭に浮かぶレベルにならなければ、時間が圧倒的に足りなくなります。
そのためには、理論を十分に理解した上で、演習をたくさんこなしてスピードと正確さを併せ持つようにならなければなりません。
一応そこまでやった私でしたが、商業簿記は44%(11点)しか取れませんでした。練習量の不足をはっきりと感じました。
工業簿記・原価計算は満点取れるレベルまで到達
工業簿記・原価計算は考え方を完璧に理解する必要があります。各原価計算の方法や、将来キャッシュフロー計算などの各問題について、そもそも何を聞かれているのかということを確実に理解し、絶対に間違えないという意識が重要です。
これは、商業簿記でも同じでしょ、と感じられるかもしれませんが、商業簿記の場合途中でミスした場合でも、部分点の設定が広めに設定されていて、1つのミスで命取りになるようなことは少ないのですが、工業簿記・原価計算の場合は1つのミスで全部落とすようなケースがあり得ます。
それもあって、商業簿記・会計学と工業簿記・原価計算では、工業簿記・原価計算の方が理解度を深める必要があると私は考えています。
電卓は利き手と反対で
また、電卓の打ち方についても工夫が必要です。公認会計士や税理士試験ほどのレベルではないものの、特に商業簿記の計算量は多く、時間が足りなくなることを恐れるのであれば、電卓を利き手と反対で打つほうが有利です。
これは好みの問題もあるかとは思いますが、右利きの私は、右手に持ったシャープペンをいちいち持ち替えて右手で電卓をうつよりも、左手で打ったほうがスピードが速かったです。
また、電卓の置き場所を机の右側にしておくと、問題用紙の置き場所や、字を書く際に右手が電卓にぶつかりそうになって邪魔になることがあるので、左側にした方が気にしなくていいかな、というのもあります。
電卓自体は、1~2週間も使っていれば慣れられると思いますので、私は是非オススメします。1回数秒だったとしても、積み重ねれば相当な時間短縮になります。もちろん、利き手と逆の手で電卓を打つことでミスが多くなるのであっては意味がありませんので、どうしても難しければ無理にやる必要はありません。
試験結果とその後
日商簿記検定1級は、当時住んでいた家の近くの商工会議所で受験しました。
小さな市だったからというのもありますが、受験者数は少なく、特に私が驚いたのは、1級と3級の受験生が同じ場所で受験していたことです。
1級(180分)と3級(120分)では試験時間が異なるため、1級を受けている私達が工業簿記・原価計算の問題を問いている最中に3級を受験している方々が退出することになり、騒然として集中を乱されましたが、何とか問題を解き切ることができました。
今でもそういう受験会場はあるのでしょうかね。
できれば1級の受験者は1級の受験者だけで受けたいところだと思います。
試験後は、インターネットもまだそれほど普及していない時代でしたので、解答速報をFAXで入手していました。時代を感じますね。
ただ、日商簿記検定1級は部分点がどこで与えられるかわかりませんし、かつ1級の場合は得点調整もありますので、よほど解答が良くできていない限り、結局は合格発表までドキドキ感を味わうことになり、それは今でも変わりません。
結果は最初にお見せしたように合格することが出来ましたが、2ヶ月間という非常に短い試験勉強期間であったため、商業簿記は本当に足切りギリギリの44%(11点)、薄氷を踏む勝利となりました。
この試験に合格したことは、私にとって経理としてのキャリアを確実なものにする、非常に有用な挑戦だったと考えています。
日商簿記検定2級をお持ちの方は、難しい試験だとは思いますが、是非学習してみることをオススメします。試験の合格だけを考えると、資格を取得するメリットに対して、合格のハードル(受験生のレベル)、受験コスト(特に時間)が高すぎるようにも感じられますが、特に工業簿記・原価計算の範囲は経営判断に必要な管理会計の分野を演習を交えて広範に学習することができますので、非常に有用であると考えます。
以上が私の日商簿記検定1級の合格体験記でした。
ここまでお読みいただきましてありがとうございました。