こちらの記事は次のようなことを知りたいという方に向けて書いています。
- 日商簿記検定がネットで受験できると聞いたけどどういうもの?
- ネット試験のメリットとデメリットを教えて!
- ネット試験とペーパー試験、結局どちらを受験するのがオススメ?
ネット試験とは?
ネット試験の概要
日商簿記検定を主催する日本商工会議所では、コロナ禍により2020年6月に試験を中止し、また2020年11月には定員制での試験実施や、試験の見送りなどの対応がとられました。
今後、このような不測の事態が発生した場合でも検定試験を安定的に実施できるように、従来のペーパー試験(統一試験)に加えてネット試験が実施されることとなりました。
なお、ネット試験の導入でペーパー試験が廃止されるわけではなく、ネット試験とペッパー試験の二本立てでの実施となります。ネット試験で合格しても、ペーパー試験で合格しても、どちらも日商簿記検定2級合格や3級合格と履歴書等に記載可能です。つまり、ネット試験が導入されても、ペーパー試験の価値には変わりがないということですね。ペーパー試験で合格している私としても安心です。
ネット試験という名称から自宅で自由に受験できると想像する方もいるかも知れませんが、試験会場・日時は商工会議所から指定された試験センターとなり、自宅で受験することができるわけではありませんので注意しましょう。
インターネット申込方式と会場問い合わせ方式の比較
ネット試験にはインターネット申込方式と会場問い合わせ方式の2つの方式があります。表にまとめると、こちらのようになります。
インターネット申込方式 | 会場問い合わせ方式 | |
試験日時 | 各試験会場が設定する任意の日。ネット試験会場によって試験日はまちまち(定期的に実施しているところや受験生の希望に応じて随時実施しているところがある) | |
ネット試験会場 (受験会場) | 商工会議所ネット試験施行機関リスト(https://links.kentei.ne.jp/organization) | |
全国140超の会場 | 全国120超の会場 | |
受験申込方法 | 株式会社CBT solutionsの専用申込サイトで申込み | 各ネット試験会場により申し込み方法が異なる。ネット予約だけでなく、メールや電話で問い合わせしなければならない場合もあり。ネット試験施行機関のリストはこちら |
受験料の 支払方法 | クレジットカードもしくはコンビニ/Pay-easy払い | ネット試験会場により異なる(銀行振込や試験当日に持参など) |
受験料 | 2級:4,720円(消費税込) 3級:2,850円(消費税込) | |
事務手数料 | 550円(消費税込) | 受験するネット試験会場により異なる(0円~) |
申し込み方法をもう少し詳しく見てみましょう。
インターネット申込方式
インターネット申込方式は、株式会社CBT-solutionsが一括して申込から試験運営前でを委託されています。
試しに予約画面を見てみました。11月下旬の東京のテストセンターの一覧です。一括委託されているため、各テストセンターの日ごとの予約状況を一覧で見ることができ、予約ページが非常に見やすいです。
テストセンターの場所も、地図へのリンクが用意されていて、試験場所の選定、日時の選択が簡単におこなえます。上記のとおりテストセンターの予約は土日が埋まっていることが多いですが、その中で空いているテストセンターを探すのも容易です。
時間帯の選択肢も非常に多く用意されていて、利用しやすいですね。資格試験の受験には多くの学習時間を必要とします。そのため、こうした受験手続きにかける時間は少しでも減らすべきですので、インターネット申込方式は使いやすくていいと思います。
ただ、事務手数料の550円はいただけないかな・・と思います。利便性が高く手数料がかかるのは理解できるのですが、ペーパー試験も会場の確保等でさまざまなコストがかかっているわけですから、ネット試験の方が高くなるというのは理解しがたい部分だと思います。
会場問い合わせ方式
一方会場問い合わせ方式です。こちらはインターネット申込方式とは打って変わって、かなりローカル感あふれる申込み方法だと思います。
簡単に言えば、地元の資格スクールなどで個別に申し込む方式、といえばわかりやすいかもしれません。いくつか例を見てみます。
たとえば、スタディPCネット秋葉原末広町の試験予約画面です。
金曜日と土曜日が日商簿記検定の試験がおこなわれると書かれていましたが、土曜日はすべて埋まっているようです。恐らく、それほど受験者のキャパシティが多くないのではないかと思われます。
また、受験時間も13:30と15:30の2回しかありませんでした。
次に、パソコンスクールスキップ梅屋敷のサイトを見てみましょう。
こちらは、日商簿記検定の開催曜日・時間が記載されており、予約はメールまたは電話で、となっていました。なお、記載された時間以外の曜日・時間でも応相談で受けてもらえる可能性もあるそうです。
もう1つ見てみましょう。
荒川区日暮里のグッドタイムスクールです。日商簿記検定についてはトップページのどこにも書かれていませんでしたが、お知らせのところを参照すると、記載がありました。
外部の方でも、受験の受付はしているようです。
このように、会場問い合わせ方式は文字通り各試験会場に問い合わせをすることで、試験を受ける方式といえます。ネット予約をしている会場もありますが、それほど多くはないのかもしれません。
ただ、インターネット申込方式と比べて、事務手数料を取っている会場は少ないと思われます。インターネット申込方式よりもリーズナブルに試験に挑戦できるという点では優れているでしょう。もちろん、Webサイトには記載されていないだけで実際には事務手数料を請求する会場もあるかもしれませんので、必ず試験会場にお問い合わせください。
ネット試験とペーパー試験とは何が違う?
ネット試験とペーパー試験の比較
今までネット試験について見てきましたが、ここでペーパー試験との比較をしてみましょう。なお、ペーパー試験は日本商工会議所では統一試験という呼び方をしていたり、筆記試験という呼び方をしている場合もありますが、ここではペーパー試験という名称にしています。
ペーパー試験(統一試験) | ネット試験 | |
試験日時 | 2月、6月、11月の年3回 | 随時開催(受験停止期間を除く) |
受験可能な級 | 1・2・3級、簿記初級・原価計算初級 | 2・3級・簿記初級・原価計算初級 |
受験会場 | 商工会議所指定の会場(学校や会議室など) | 全国260超の会場(インターネット申込+会場問い合わせ) |
受験料 | 2級:4,720円(消費税込) 3級:2,850円(消費税込) | 2級:4,720円(消費税込) 3級:2,850円(消費税込) +事務手数料0~550円 |
合格発表 | 2~3週間後 | 解答完了後すぐにわかる |
合格証 | 紙の合格証 | デジタル合格証 |
筆記用具 | 自分で持ち込む | ボールペンが貸与される |
ネット試験のメリット
それではネット試験のメリットを見ていきましょう。
自分のスケジュールに合わせて受験できる
ネット試験は、年3回決まった時期におこなわれるペーパー試験とは異なり、自分の好きなタイミングで受験することが可能です。
2月、6月、11月は忙しくて時間が全く取れない、という方でも好きな時期に受験できますので、ネット試験導入によりチャンスが広がりました。
このメリットは大きいのではないかと思います。
不合格になってもすぐに再受験可能
受験時期に続いて、こちらのメリットも大きいと思いますが、ネット試験ならば、たとえ受験して不合格になってもすぐに次の試験を予約して、学習内容を忘れていないうちに再チャレンジすることが可能です。
資格試験を受験する際に必ず考えておかなければならないことに、不合格になったときにどうするか?ということがあります。
もちろん、合格しか考えない、一発合格するんだ!という意気込みでいくべきだと思います。ですが、ある程度のコスト(費用、時間)をかけることになる資格試験への挑戦では、試験の後どうするか?ということを考えておくことも大事です。
ネット試験を利用すれば、いつでも再挑戦できるのですから受験するハードルが低くなるのはいいですね。
試験当日すぐに合否がわかる
ネット試験では、試験会場のパソコンで解答を完了すると、その場で合否がわかります。ペーパー試験では合格発表までに2〜3週間かかりますから、合格発表までの期間合否を心配することになります。
もちろん、予備校などの解答速報である程度合否の感覚はつかめるでしょうが、配点が発表されるわけではないため、確実な合否判断はできません。
その点、ネット試験ではすぐに合否がわかるため、余計な心配の必要もありません。その場で合否がわかれば、もし不合格だったとしても帰り道に次の試験を予約して再挑戦できます。
試験日の変更・キャンセルが簡単にできる
ペーパー試験は、商工会議所が決めた日に受ける必要があり、もし当日別の予定が入ってしまった場合、受験を断念せざるを得なくなります。これはあらゆるペーパー試験でこうした傾向にあるのですが、試験に申し込んだ人数と実際に会場で試験を受験した人数には差が出るのが一般的です。
もちろん、申し込みだけしておいて、勉強できなかったからあきらめて当日試験会場に来なかった、という方もいるでしょう。ですが、会社や家族の都合で、本当は受験したいのに受験を断念せざるを得なかった、という方もいるのではないでしょうか。
2級と3級のダブル受験が楽
もちろん2級に合格するだけの実力を身につける必要はありますが、ネット試験の導入により、2級と3級のダブル受験が容易になりました。従来のペーパー試験の場合、2級と3級を同時に受験するには試験日の午前中に3級を受験し、午後に2級を受験しなければなりませんでした。
これは意外にきつくて、逆ならばいいのですが、先に簡単な3級を受験して、少し疲れた後から難しい2級を受験することになるので、厳しいですね。
ネット試験ならば先に3級を受験して、何日か後に2級を受験することも可能ですので、体調管理に気をつかうことが可能です。
ネット試験のデメリット
続いてネット試験のデメリットをご紹介します。
出題と解答はパソコン、途中経過はメモ用紙となり面倒
ネット試験の最大のデメリットということになるかと思いますが、問題の出題はパソコンでされるものの、Excelで計算をするわけではありませんので、計算自体は配布されるメモ用紙に手書きでおこなう必要があります。
日商簿記検定2級くらいの難易度までであれば、そこまで複雑な計算にはならないため、問題ないという方もいるかも知れませんが、パソコン画面に表示される数字を見ながらメモ用紙に転記して計算をおこなっていくのは途中経過がわかりづらく、ミスが発生してしまう可能性が高くなると考えます。
パソコンの操作に慣れていないと解答に時間がかかる
ペーパー試験であれば、問題用紙の設問を見ながらメモ用紙で計算をしていき、そのまま解答用紙に記載するという解答プロセスとなり、すべて紙上で完結するためいいのですが、ネット試験の場合は、前述のとおり
パソコン上で出題→メモ用紙に転記しつつ計算→パソコン上で解答
という解答プロセスとなり、パソコンとメモ用紙を行ったり来たりする形となりますので、ただでさえ時間がかかります。これに加えてパソコン操作にも慣れていないと、余計な時間を費やしてしまい、解答時間が足りなくなってしまうという可能性があります。
事前に模擬試験のような形で十分な練習をしておく必要があるでしょう。
問題用紙に書き込みできない
こちらは人によっては不要という場合もあるかもしれませんが、パソコン上で問題が出題される関係上、問題用紙に書き込みやアンダーラインを引いたりすることはできません。
資格試験において、問題を読み込む際に重要ポイントに印をつけて読んでいくプロセスは私は大事だと思っているので、この点はネット試験の不利な点であると考えます。
印をつけて読んでいくことは、安全確認の指差し確認のようなもので、ただ読んでいるだけでは理解したつもりでも読み飛ばしてしまうことがあるため、丸で囲んだり、アンダーラインを引くことでより頭の中に印象付けることができる、後から戻って確認する際に印をつけた部分を中心に確認できる、といった点で有効です。
筆記用具の持ち込みができない
あまり大きな問題ではないかもしれませんが、ネット試験は個別に試験を受ける形式となるため、不正防止の観点からなのか、筆記用具を持ち込むことができず、メモ用紙への記載、計算用にはボールペンが貸し出されます。
書き間違えた際に消しゴムで消せないため、メモが見づらくなったり、計算しづらくなるといったデメリットがあると思います。使い慣れた筆記用具を使えないというのも少し不利な点かもしれません。
紙の合格証書が交付されない
ネット試験では、いわゆる紙の合格証書が交付されません。代わりにデジタル合格証というものが交付され、2次元コードをスマートフォン等で読み取ることでいつでも表示可能です。もちろん画面を印刷して資格の証明とすることも可能でしょう。
資格試験はあくまでも自らの能力がその資格を取得するのにふさわしいかどうかを判定するものであり、紙であろうとネットの画面であろうと変わりはないと考えますが、紙のほうがいいと思う方もいるかも知れませんね。
オススメするのはネット試験!
ここまでネット試験のメリットとデメリットを紹介してきましたが、私まっすーがオススメするのはネット試験です!
その理由はメリットのうち、
- 自分のスケジュールに合わせて受験できる
- 不合格になってもすぐに再受験可能
という部分のメリットが大きすぎるためです。学生の方であればまだいいのですが、社会人になると仕事や家庭の都合で試験日に受験が
参考までに日商簿記検定3級ペーパー試験の直近4回分のデータを見てみましょう。毎回7~9千人というレベルで受験をできていない方がいます。もちろん勉強が足りず受験を諦めた方もいるでしょうが、忙しくて試験が受けられなかったという方も一定数いると思います。
回数 | 申込者数(名) | 受験者数(名) | 申込者数- 受験者数(名) |
第158回(2021年2回目) | 58,070 | 49,313 | 8,757 |
第159回(2021年3回目) | 58,025 | 49,095 | 8,930 |
第160回(2022年1回目) | 52,649 | 44,218 | 8,431 |
第161回(2022年2回目) | 43,723 | 36,654 | 7,069 |
こうした受験機会を失う恐れが少なくなったネット試験は、忙しい社会人には大きな助けになるといえるでしょう。また、再チャレンジがしやすくなったというのもオススメな点です。
逆に、デメリットで挙げた
- 出題と解答はパソコン、途中経過はメモ用紙となり煩雑
- パソコンの操作に慣れていないと解答に時間がかかる
といった点は慣れてしまえばそこまで影響がないものと考えます。もちろんどうしても慣れることができない、という場合であればペーパー試験への切り替えも視野に入れる必要があるでしょう。
原価計算学習にオススメの教材
最後に、日商簿記を受験しようと考えている方にオススメの書籍をご紹介しておきます。
日商簿記検定3級はこちらのテキスト+問題集1冊の学習で合格レベルに達することができると考えます。
また、日商簿記検定2級はこちらの書籍をオススメします。商業簿記・工業簿記の2冊に分かれますが、テキスト+問題集で効率的に学習を進めることが可能です。
書籍だけではわからない!という方にオススメするのが資格合格パートナーSTUDYingの簿記検定講座です。スキマ時間を有効に活用できて、移動時間などを活かして簿記のエキスパートを目指しましょう!
まとめ
以上、日商簿記検定2級・3級で導入されたネット試験についての説明とペーパー試験との比較をしてきましたが、いかがでしたでしょうか。ここでまとめておきます。
- 日商簿記検定2級・3級はネット試験とペーパー試験(統一試験)のどちらも受験可能
- ネット試験にはインターネット申込方式と会場問い合わせ方式がある
- ネット試験のメリットは、自分のスケジュールに合わせて受験できる・不合格になってもすぐに再受験可能・試験当日すぐに合否がわかる・試験日の変更・キャンセルが簡単にできる・2級と3級のダブル受験が楽
- ネット試験のデメリットは、出題と解答はパソコン、途中経過はメモ用紙となり面倒・パソコンの操作に慣れていないと解答に時間がかかる・問題用紙に書き込みできない・筆記用具の持ち込みができない・紙の合格証書が交付されない
- メリットとデメリットを比較した結果、ネット試験を受験するのがオススメ!理由は
自分のスケジュールに合わせて受験できる・不合格になってもすぐに再受験可能という点が大きすぎる
以上、お読みいただきましてありがとうございました。