こちらの記事は次のようなことを知りたいという方に向けて書いています。
- 仮想通貨のマイニングを始めたけど、税金を払わなきゃいけないって本当?
- マイニングで税金を払わなきゃいけなくなるのはどのタイミング?
- サラリーマンがマイニングで稼いでも、20万円以上稼がなければ確定申告はいらないよね?
今回は仮想通貨の税金の話です。マイニングおこなった場合に考えなければならない税金についてやさしく解説します。
仮想通貨のマイニング
仮想通貨のマイニングは投資として取り扱われる
仮想通貨のマイニングは投資として考えられます。仮想通貨のマイニングとは、手持ちのパソコンのGPUの能力を活用して、仮想通貨のブロックチェーン(取引台帳)のブロック生成作業に加担することで報酬を得ることです。
手持ちのパソコンが資本となり、報酬が収益ということですね。
手持ちのパソコンと書きましたが、実はマイニングに参加する方法は他にもあります。仮想通貨のマイニングには、以下の3つのパターンがあります。
ソロマイニング
自分でマイニングするためのパソコンを購入して、個人でマイニングすることです。ブロック生成のハードルは高いですが、もし成し遂げることができれば、報酬は全て自分のものになります。
プールマイニング
自分一人でマイニングをおこなうのではなく、あるグループに参加して、その貢献度に応じて報酬を受けるものです。
クラウドマイニング
マイニングをしている企業や組織に、資金を提供することで、その対価として利益の分配を得ることです。こちらの記事で私が説明しているNicehashは、クラウドマイニングサイトの一種ですね。このサイトにデポジットしておいて、マイニング設備をレンタルしてマイニングをおこない、その報酬を得ることができます。
私のNicehashへの参加方法は、自分のパソコンを貸し出すことで報酬を得ています。そのため、プールマイニングの一種のようにも思えますが、実際はクラウドマイニングに設備を提供することで、報酬を得ていることになります。
マイニングをしているといえばしているのですが、自分のブロック生成のために参加しているわけではないため、プールマイニングにはならない、ということです。
Nicehashのサイトにもその説明が記載されています(英語サイト)。
投資の利益には課税される
仮想通貨のマイニングは投資として扱われる、ということですのでリターンには当然税金がかかってきます。残念な話ですが、仕方がないですね。
手持ち資金を支払って仮想通貨を買って値上がりした場合も、パソコンを購入してマイニングをおこなって仮想通貨を報酬としてもらう場合も、同じように税金がかかってくるんですね。
仮想通貨については「税金がたくさんかかるから投資メリットが少ない」という話を聞いたことはないですか?どの程度投資するか、そして仮想通貨がどれだけ値上がり・値下がりするかにもよるのですが、この考え方は当たらずとも遠からず、といったところだと思います。
仮想通貨にかかる税金
仮想通貨で得られる収益は雑所得
まず大前提として理解しておく必要があるのが、仮想通貨の取引で得られる所得は、原則的に雑所得として扱われるということです。
雑所得というのは、所得税法で定義された下記10種類の所得の一番最後にある、「他の9種類に当てはまらない」もの全てを含む所得区分です。
利子所得 | 公社債や預貯金の利子、公社債投信の収益分配などから生じる所得 |
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配当所得 | 株式配当、証券投資信託の収益分配、出資の剰余金の分配などから生じる所得 |
不動産所得 | 不動産、土地の権利、船舶、航空機の貸付などから生じる所得 |
事業所得 | 一般的な事業から生まれる所得 |
給与所得 | 勤務先から受けとる給料や賞与などの所得 |
退職所得 | 退職によって勤務先から受ける退職手当などの所得 |
山林所得 | 山林を伐採したものなどを譲渡した場合に生ずる所得 |
譲渡所得 | 土地・建物・株式など、資産の譲渡による所得 |
一時所得 | 上記8種類に当てはまらない、一時的な所得。クイズの賞金や満期保険金など |
雑所得 | 上記9種類に当てはまらない所得 |
雑所得の例
雑所得の例としては、仮想通貨取引による所得の他に、以下のようなものがあります。
- 国民年金、厚生年金などの公的年金の受給額
- 勤めた会社から受け取る退職年金(一時払いの退職金は退職所得)
- 先物取引やFX取引による利益
- 副業として収益を得た原稿料、講演料、ネットオークションの売上など
雑所得の特徴
雑所得の特徴には、総合課税・累進課税・損益通算禁止・損失の繰越控除禁止があります。以下、解説します。
総合課税
総合課税とは、1年間のその人が得た所得を合計して課税の対象とする計算方式です。雑所得は、給与所得など各種の所得と合計した金額に対して税率をかけることで課税額を計算します。
退職所得や山林所得のような、その所得だけに対して税率をかける分離課税とは異なる概念となります。
累進課税
総合課税による課税は、所得額に応じて税率を段階的に上げる累進課税制度が採用されています。所得の高い人は、より税負担額を増やすという考えです。税率は5%から45%の7段階に分かれています。
国税庁「No.2260 所得税の税率」に所得税の速算表があります。例えば、給与所得500万円の方が仮想通貨取引で300万円の所得を得た場合は、上記の通り23%の税率が適用されますので、
(500万円+300万円)✕23%ー636,000円=1,111,660円
の所得税が課せられることになります。
なお、この所得には翌年住民税がかかってきます。個人の住民税には均等割と所得割があり、均等割は定額のため所得額は関係ありませんが、所得割は前年の所得に対しておおむね10%が課せられます。
4千万円以上の所得があった場合、45%の所得税と、10%の住民税、合計55%が課せられるということになりますね。この税率が大きすぎると言って、仮想通貨取引をオススメしない、という考え方もあるようです。
確かに、株式の売買による利益であれば、申告分離課税で所得税+住民税合計で20%(復興特別所得税を含めると20.315%)の税率で済みますので、この差は大きいですよね。
損益通算禁止
損益通算とは、所得の利益と損失額を相殺する計算のことをいいます。ある所得では赤字が出ていて、ある所得では黒字が出ている場合に、黒字分から赤字分を差し引くことで税金額を減らすことができます。損益通算をおこなうことのできる所得は、事業所得・不動産所得・総合課税の譲渡所得・山林所得の4つの所得に限られています。
雑所得ではこの損益通算が認められていません。仮想通貨取引で赤字を出したとしても、不動産所得から差し引いたりすることはできないということです。
損失の繰越控除禁止
上場株式の売買によって生じた損失は、3年間は繰り越すことができます。そのため、翌年以降に発生した利益から控除することができますが、仮想通貨の取引で発生した損失は、その年度にのみ損失として取り扱うこととなり、翌年以降に繰り越すことができません。投資という観点で考えると、このデメリットは大きいですね。
雑所得の申告の必要性
雑所得による所得が、20万円を超える場合は確定申告が必要になる可能性があります。この20万円というのは、仮想通貨で収益を計上したタイミングです。
これから、仮想通貨での収益計上タイミングについて説明します。
仮想通貨の収益計上タイミング
仮想通貨はマイニングをはじめ、いろいろな方法で取得することが可能です。ここでは、マイニングで仮想通貨を得た場合の収益発生のタイミングについて解説します。
マイニングで仮想通貨を取得した場合
取得ごとに時価で評価した報酬を収益として認識
マイニングで仮想通貨を取得した場合は、仮想通貨を取得した時点で損益が発生します。これは何となくわかりますよね。マイニングの場合、毎日というか、数十秒に一回というレベルで毎日少しずつ仮想通貨が溜まっていきます。ただ、仮想通貨が貯まるタイミングというよりは、自分の口座に払い出されるタイミングで収益を認識することになります。
副業をしていないサラリーマンの方が、1月~12月で20万円を超えるマイニングの報酬を得た場合は、確定申告して税金を納める必要が出てきます。
このとき注意したいのが収益の認識方法です。国税庁の下記文書によると、
暗号資産に関する税務上の取扱いについて(情報)(令和2年12月18日)
マイニングの場合、その取得した暗号試算(仮想通貨)の取得時点の価額(時価)を所得として扱うとのことです。
では時価とは何でしょうか。
こちらの例で見てみましょう。Nicehashの場合、4時間に一度仮想通貨の払い出しタイミングが設けられています。この時に、0.00001BTC(1BTC=600万円換算で60円)を超えていれば、払い出しが行われ、超えていなければ次の払い出しに持ち越されます。
私の愛機GeForce GTX1660 Superが頑張ってくれて、24時間中に6回の払い出し機会を得ました。この結果をCSVダウンロードすると以下のようになります。
時価ということなので、これを払い出し時間ごとのレートで掛け算して、日本円に換算することになると思いますが、非常に面倒ですね。そもそもその時間のレートを取得することができるかというと、難しいです。
そのため、簡易的に1日の収益を合計して、それにその日のレートを掛け算することで、収益を計算するということで良さそうです。ただ、仮想通貨は変動が激しく、本当に1日で大幅に収益が変わるような場合、計算方法によって大きく結果が変わってきますので本当にそれでいいかどうかは税理士の方に相談するなどして、確かな情報で処理していただく方が確実です。
私の4月20日のレートは、Investing.comのデータでは1BTC=6,113,757円(終値)とのことですので、
0.0000753BTC ✕ 6,113,757円 = 460.3659円
ということになります。このペースで1年間稼げれば17万円弱、もう少しで20万円超というところです。が、コストを考えていませんし、この効率で稼げるかと言うとそんなに甘くはないですね。
さて、収益に関して述べましたが、冒頭で述べたとおりマイニングは投資です。投資にはコストがつきものです。マイニングの場合以下のコストが考えられます。
- パソコンの購入費用
- 電気代
パソコンの購入費用は、個人でマイニングをおこなう場合には、
- 購入金額10万円未満・・・全額その年度の経費に計上
- 購入金額10万円以上20万円未満・・一括償却資産として3年間で分割計上
- 購入金額20万円以上・・・固定資産の減価償却として4年間で分割計上
という取り扱いになります。なお、個人の方で青色申告書を提出している方や、一定の基準を満たす中小企業の場合は、以下の制度の活用も考えられます。
- 購入金額30万円未満・・・中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例により全額を経費計上
- 購入金額30万円以上・・・中小企業経営強化税制(中小企業者等が特定経営力向上設備等を取得した場合の特別償却又は税額控除)により全額を経費計上
いずれも少々複雑な内容となっていますので、活用したい場合は、税理士や中小企業診断士に相談することをオススメします。
あとは電気代を損金として計上することが可能です。ただし、パソコンを自分の趣味や他の業務に使用している場合、時間で分けるなどして、マイニングに使用した電気代を特定して、それだけを損金としなければならないことにご注意ください。
マイニング以外での仮想通貨収得の場合
マイニング以外で仮想通貨を収得した場合も、課税タイミングを考慮する必要があります。この内容については長くなってしまうため別記事で説明します。
まとめ
仮想通貨のマイニングにかかる税金について説明しました。以下、まとめます。
- 仮想通貨のマイニングは投資として取り扱われる。そのため利益には課税される
- 仮想通貨で得られる収益は所得税法上の雑所得。総合課税・累進課税・損益通算禁止・損失の繰越控除禁止という特徴がある
- サラリーマンで雑所得で年間20万円超の所得がある場合確定申告が必要
- 仮想通貨のマイニングで収益計上をするタイミングは、仮想通貨獲得ごとに時価で評価。毎日収益があるなら毎日のレートを確認する必要あり。
以上です。マイニングは手軽に始められて、相場にもよりますがリスクもそれほど大きくないと思います。税金のことをよく知っておいて、申告漏れなどにならないよう気をつけましょう。
ここまでお読みくださいましてありがとうございました。