こちらの記事は次のようなことを知りたいという方に向けて書いています。
- 高度情報技術者試験に挑戦してみたいけど、ITストラテジストを受けるのはどうかな?
- ITストラテジスト試験の合格体験記が読みたい!
- ITストラテジスト試験の対策が知りたい!
ITストラテジスト試験には2014(平成26)年秋期試験で一発合格しており、その体験をお話しつつ、試験攻略法をアドバイスします。
ITストラテジスト試験の合格証と得点
説明への説得力を持たせるために、私のITストラテジスト試験の合格証と得点をアップしておきます。
点数だけ大きくして表示します。
午前I試験は1年半前にデータベーススペシャリスト試験に合格していたため、受験を免除されています。高度情報技術者試験は、専門分野の学習に集中したいですし、試験自体が長丁場になりますので、テクノロジ系の対応が少し面倒な午前I試験をパスできるのはありがたいですね。
知っていますか?午前I試験の恐ろしさを。午前Iからの受験生の3割は午前Iで敗退しているんです。
午前I試験の免除は、以下の要件のいずれかを満たすことで、2年間の間受けられます。たとえば、令和3年の春期試験で免除条件を満たした場合は令和5年春期試験まで免除申請が可能です。
高度情報技術者試験は応用情報技術者試験に合格した勢いで、期間を開けずに、長くとも2年に1回のペースで受験していくのが効率が良さそうです。
受験を志したきっかけ
私のITストラテジスト試験の受験のきっかけは、その2年前に中小企業診断士試験に合格し、中小企業診断士としての登録を受けたことです。
私は、現在も務める会社で働きながら中小企業診断士の資格を取得したのですが、その時点では子どもも小さく、すぐに中小企業診断士としての活動を大きく広げていくことは考えていませんでした。
そのため、将来中小企業診断士として活動していくに当たり、専門分野を広げておきたいと志向するようになりました。英語力に磨きをかけたり、社会保険労務士試験に挑戦したり、色々と幅を広げるための行動をしましたが、ITスキルの向上もその一つでした。
前述のとおり、得意分野のデータベーススペシャリスト試験にも合格していたのですが、もう少し自分のITスキルの証明ができる資格を取得しておきたいと思いました。
そこで、どうせやるならば今まで受験してきた情報技術者試験の最高峰であるITストラテジスト試験に挑んでみよう、と考えるようになりました。
また、友人の会社でITストラテジスト試験に合格したときの報奨金でものすごい金額がもらえる、ということを聞いて興味を持ちました。
以下に例を示してみますが・・・一つの試験に合格するだけでこの金額がもらえるというのは、すごくないですか?
- 株式会社ギャラクシィ
資格取得一時金:100万円 技術者手当:15万円 - 情報技術開発株式会社
資格取得奨励金制度 奨励金:100万円 - 株式会社ワイドテック
資格取得支援制度 報奨金:26万円
Webサイトで金額を公表していない会社も多数あるでしょう。
私の会社でもそうですが、他の会社でも一銭も出ないという所も多いようですけどね。
前述のとおりITストラテジスト試験は、1~4のスキルレベルを設定している情報処理技術者試験制度のスキルレベル4(高度情報技術者試験)に該当し、その中でも最高の難易度と言われています。
そんな最高難易度の試験なのですが、中小企業診断士資格を取得している方にはITストラテジスト試験への挑戦を強くオススメします。詳しくはこちらの記事で述べていますので、よろしければご覧ください。
試験研究
これは、資格試験の参考書や過去問などを見て、どのような学習をすれば最も効率的に学習を進められ、一発合格の可能性を高めて高得点で合格できるかを考えます。
このITストラテジスト試験の受験時は、試験が10月19日におこなわれたのですが、その約2ヶ月前の8月24日に社会保険労務士を受験しており、効率的な受験対策が可能かを考えました。
まず、試験の形式、時間割について確認します。
試験時間だけで合計5時間の長丁場、できれば午前Iは免除を狙いたいですね。
それでは、各試験について見てみます。
午前I試験
私は、午前I試験はITストラテジスト試験の受験時には受験しませんでしたが、2017年のシステム監査技術者試験時に受験しています。
その時の研究結果を記載します。
下記は応用情報技術者試験の試験範囲の説明ですが、高度情報技術者試験の午前Iは、同時期に実施される応用情報技術者試験の80問から選ばれた30問が出題されます。ですので、基本的には応用情報技術者の午前試験の対策と同じで問題ありません。
試験時間150分。四肢択一式(マークシート使用)で80問出題され全問解答。素点形式で採点され60点以上で合格(満点は100点)。
問1-問50:テクノロジ系(コンピュータ科学基礎・ハードウェア・稼働率・ソフトウェア・論理回路・データベース(SQL、正規化)・ネットワーク・セキュリティ・設計)
問51-問60:マネジメント系(DFD・開発規模、工数など)
問61-問80:ストラテジ系(全体計画立案・業務改善・契約タイプ・経営戦略・ABC分析・利益や費用の計算・関係法規など)
Wikipedia応用情報技術者試験より
応用情報技術者試験の対策でもそうですが、基本的には過去問演習で十分に合格点の60点は確保可能です。高度情報技術者試験の過去問では問題数が少ないと感じる場合は、応用情報技術者試験の過去問も学習範囲に入れてもいいかもしれません。
ただ、時間はできる限りかけず、他の試験対策に時間をかけた方がいいと私は思います。
過去問演習で十分に合格可能!
午前II試験
午前II試験からは、ITストラテジストの専門分野を中心に出題されます。
午後II試験は、試験時間は40分、4肢択一式で25問出題されます。
出題範囲は以下のとおりです。
スキルレベル4
- システム戦略、システム企画
- 経営戦略マネジメント
- ビジネスインダストリ(IoT関連領域)
- 企業活動
- 情報セキュリティ
スキルレベル3
- 技術戦略マネジメント
- 法務
スキルレベルの3と4では、4の方がより高度なことを問われることになるのですが、正直4択試験でのレベルは過去問対策で十分可能なレベルであり、あまり意識することはないと考えます。こちらも午前I同様、過去問演習で時間をかけずに対策したいところです。
午前I同様、過去問演習で十分に合格可能!
午後I試験
情報技術者試験は午後試験からが本番です。
とはいえ、高度情報技術者試験の場合は午後IIの記述式、論述式試験が真の試験であり、午後Iは難易度は比較的高いものの、ここで苦戦するようでは午後IIでの戦いは厳しいかもしれません。
ITストラテジスト試験のような論述式試験の場合は、午後Iの事例演習と、午後IIの自らの体験の論述では難易度の方向性が違いますので、一概に難易度の相関性が高いとは言い切れませんので、望みはあるかもしれません。
一方で、ネットワーク・データベース・エンベデッドシステムスペシャリスト試験の記述式試験では午後Iで苦戦する場合、午後IIの合格はほぼ無理だと思います。午後IIは午後Iの完全上位互換の試験となり、難易度が段違いに上昇します。
さて、午後I試験の概要は以下のとおりです。
記述式で4題が出題され、内2題を選択して解答。4題のうち1題が組み込みシステムの問題であり、2020年度試験より、組み込みシステムに関する領域では第四次産業革命関連の新技術(AI、ビッグデータ、IoTなど)の活用についての内容の出題が強化される、
ということです。この記述式の問題は、以下のテーマで出題されます。
- 業種ごとの事業特性を反映し情報技術(IT)を活用した事業戦略の策定に関すること
- 業種ごとの事業特性を反映した情報システム戦略と全体システム化計画の策定に関すること
- 業種ごとの事業特性を反映した個別システム化構想・計画の策定に関すること
- 業種ごとの前提や制約を考慮した情報システム戦略の実行管理と評価に関すること
- 組み込みシステム・IoTを利用したシステムの企画,開発,サポート及び保守計画の策定・推進に関すること
私の場合、問題をひと目見て感じたのは、難易度が
中小企業診断士の二次試験(事例問題)>>>>>>>ITストラテジスト試験の午後I問題>>>>「応用情報技術者試験の午後ストラテジ系問題
ということでした。時間が90分で2問ですから、1問あたりの時間は45分。1問あたり2~4ページの記述があり、設問も長文のものがあるため時間が十分にあるとは言えません。
ただ、中小企業診断士試験ほどのレベルではないと言い切れるのが、
- 設問の問い方が非常に素直で、本文中に書いてある内容で解答可能な事が多い
- 模範解答が公開されているため、解答の方向性が事前に想定できる
という点です。
もし模範解答が示されないのであれば、試験対策は大変かもしれません。とはいえ、中小企業診断士試験では与件文(企業の状況説明)のどこのことを聞いているのか不明確なものが多く、そのために難易度が高いのですが、ITストラテジスト試験の場合は素直に聞いている場所を特定可能なものが多い印象です。
もちろん、文章を読むトレーニングをしてきたから特定できる、ということもあるのかもしれません。
もし、午後I試験で難しいと考えられるのであれば、過去問研究が不足している可能性があります。ITストラテジスト試験はITの試験であるため、ITに関する知識はもちろん必要ですが、実はそれほど高度なことを問われるわけではなく、それよりは経営課題について理解し、助言できる力を問われています。
そのため、解説が充実している参考書で解説されている過去問の事例数問をじっくりと取り組んでみることをオススメします。本当に穴が空くくらい何度も何度も問題文を読んで、設問とのつながりをしっかりと理解する。遠回りのようで、実はそれが上達への近道であると考えます。
あとは、文章をまとめる能力に関しては必須です。因果関係で説明すること、例えば「○○を提案する。理由は△△だからである。」といった表現にすることや、言い回しをコンパクトにして字数制限以内に自然に収めることは点数を上げるために必要です。これも少し練習が必要な領域です。
なお、いくつかの情報技術者試験を受けているものとしての感想ですが、記述式の試験については、模範解答どおりに解答していなければすべて0点ということはなく、複数解答が用意されているか、基準が設定されているかしていて、書いておけば何らかの部分点が与えられるなどの設定がされていると考えます。
中小企業診断士試験とITストラテジスト試験の比較は次の記事でも記載していますのでよろしければご参照ください。
問題文を読んで設問の箇所が特定できるかが鍵。それが難しいのであれば練習を積むべき!また文章をまとめる能力も必須で、要練習!
午後II試験
いよいよ午後II試験、論述試験です。
正直なところ、私もこれについては頭を抱えました。過去問を見た限り、どうやっても対策のしようがない、と感じてしまいました。
たとえ過去問の問題に対して、2,000~3,000文字の論述を自分で書いてみたところで、それが正しいかどうかわからない。そもそもどのようなルールで書けばいいのかもわからない。何か情報が必要だ!という結論になり、この本を手に取りました。
情報処理教科書 ITストラテジスト 2019~2020年版 広田 航二 (著)
ITストラテジスト試験については、この本を手に取ることができたから合格できたと言っても過言ではありません。
あまりに試験対策に走りすぎ、という批判もあるかとは思いますが、十分な対策ができず敗退するよりは、きちんと対策して合格する方が私はいいと考えます。
午後II論述に関して、合格するためのテクニックがしっかりと紹介されています。たとえば、こんな感じです。
- 論述のネタは事前につくっておく。5~6例作るのが望ましい。
- 試験問題が想定と異なっていたとしても、何とか準備していたネタが使えるように論述を構成する。その場の思いつきでの答案構成はしない。
- 論述は因果関係を明確にして記述する。わざとらしいくらい因果関係を意識して、つまらない文章でも構わない。
- 時間配分は非常に重要。最初30分で答案構成、残り90分で記述することをベースにする。
- 章立て、字下げ、禁則処理などを的確におこなう。
- できるだけ事前に3,000文字の論述を体験しておく。
これを守ると守らないで、A評価とB評価の差くらいにはなるのではないでしょうか。A評価の点数が何点以上かは公表されていませんが、中小企業診断士試験と同じようにAが60点以上、Bが59~50点だとすれば、10点くらいの差ですよね。
もちろん、中身で評価されるのがあるべき姿ですが、一定数以上の方が合格点の評価になった場合、ITストラテジスト試験レベルの試験であれば、合格者の調整が行われる可能性は高く、上記の5の論述のルールを守っているか、といった部分で差が出る可能性はあります。
試験対策自体はきちんと事前に論述のネタを練っておけば、本番は論述のルールを意識して書けば、まったく歯が立たないということはないと思います。
論述のネタに関しては、私が考えたものを今後紹介していきたいと思います。
論述のルールを理解して、ネタを事前に考えておけば、後は本試験で書くだけ!
実際の学習
午前試験は過去問のみ
午前I試験は免除、午前II試験についても得意分野のストラテジ系でしたので、5年分過去問をやっただけで、対策は十分と判断しました。
ストラテジ系の知識がなかった場合は基礎知識を入れる必要があるとは思うのですが、正直高度情報技術者であっても午前試験は過去問アウトプット理論で、過去問のみで対応可能と考えます。
過去問のみ5年分
午後I試験も過去問のみ
午後I試験は記述式試験ですが、これは演習量が鍵になると思います。私の場合はITストラテジスト試験の午後Iよりもはるかに難易度の高い(不親切、意地悪という点で)中小企業診断士試験2次試験の対策で、事例問題を90以上こなしていましたので完全な得意分野でした。
そのため、過去問を5年分もやれば十分な手応えを感じられました。
ある程度コツを掴んだら、過去問を可能な限り遡って、演習量を増やすことも重要と考えます。
過去問のみ5年分
午後II試験はネタ作りに集中
午後II試験対策は、先に述べましたが論述のルールが理解できれば、あとは論述のネタを考えておくことにつきます。
私が考えたネタは6つでした。実際の試験ではそのうち数個が使えるという幸運な状況になり、最もふさわしいものを選んで解答することができました。
ネタ作りには、もちろん自分で経験したシステムプロジェクトについての内容も入れることができますが、残念ながら必ずしも輝かしい成功事例というわけでは有りませんので、結果だけを成功事例に書き換えるとか、またはやはりインターネットを利用した成功事例の情報収集が必須です。
基本的には「システムプロジェクト 成功事例」という検索キーワードからはじめ徐々に事例を絞っていきます。調達・生産システムの改善だったり、ECサイトの立ち上げだったり、ERPの導入だったり、本当に多くの事例であふれています。
その中から、過去問で問われたことのある事例に合わせた形で書けそうな事例を選んでいきます。あまり多すぎてもネタ作りが大変ですので、やはり5~6個に絞るくらいでいいと思います。
論述のネタ作りに集中
試験結果とその後
試験結果はこの記事の最初の方に出していますが、無事合格でした。得点は60点以上取ればいいのでどうでもいいのですが、午後I試験が88点で、もう少しで90点だったので、ちょっと悔しい思いをしました。
いずれにしても、中小企業診断士試験のために一生懸命勉強した内容を大いに活用することができて本当によかったと思います。
IT業界で働いている方は本当に多くいらっしゃると思いますが、ITストラテジスト資格を保有している方はほんの一握りしかいません。もちろん、ITストラテジスト資格を持っていればどんな仕事でもできるわけではないですし、資格の有用性を疑問視する声もあるのは事実です。
ですが、ITストラテジスト資格を取得してみて思うのは、文章を読んで業務課題を把握して、自分の言葉でそれをきちんと説明できる、という社会人であれば当たり前のことですがそのスキルを国家資格として証明されているのは大きいと思います。
仕事ができる、と自分では思っている人でも、客観的な評価をすると実は全然そうでもなかった、という例も多いと思います。その意味では客観的な評価を破格で受けられて、しかもスキルの証明になるという資格が役に立たないことなど有りえません。
もし役に立たないのであれば、それは活かし方、アピールの仕方の問題だと思います。
それこそ、業務経験をきちんと積めているのであれば、ITストラテジスト資格はプラスにしかなりません。
私は経理の仕事をしていますが、ITストラテジスト含め、情報技術者試験への挑戦をしていくことで、ITに関わる業務を担当させてもらうことが多くなりました。資格の効果を十分に感じています。
以上、お読みいただきましてありがとうございました。