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2014年ITストラテジスト午後II論述試験の再現答案公開! どれくらいのレベルで合格できる?

こちらの記事は次のような方のニーズに応えるために書いています。

  • ITストラテジスト試験を受けようと思うけど、論述試験の再現答案が見たい!
  • ITストラテジスト試験の午後II論述の合格レベルを知りたい!
  • ITストラテジスト試験の午後II試験の対策はどうすればいい?
まっすーです。中小企業診断士試験他多くの資格に合格した実績をベースに数々の資格試験の合格アドバイスをしています。
中小企業診断士資格を取得後、ITストラテジスト試験にも挑戦し、高得点で一発合格しました。午後IIの論述試験は対策が難しいですが、ポイントを抑えておけば問題なく合格答案が作成できますよ。2014年(平成26年)の試験時の再現答案とともに、ポイントを説明しますね。

ITストラテジスト午後II試験について

ITストラテジスト午後II試験の概要

ITストラテジスト午後II試験は論述試験です。
ITストラテジスト試験自体は、午前I・II、午後I・IIの4つに分かれていますが、実質この午後II試験が本番です。

それまでの試験は、受験者が論述試験を採点できるレベルかどうかを確かめるための、いわば足切りのようなものです。

ちょっと古いですが、私が受験した際の得点分布です。午前I試験免除の方がおり、また途中退出の方もいると思いますのであくまで推定ですが、4,374名が受験し、論述試験まで進めた方が1,800名、合格者は671名でした。

約6割の方が論述試験が採点されずに終わってしまうんですね。なかなか厳しさを感じます。

ITストラテジストの午後II試験は以下のような内容です。

120分の試験時間で、3問出題のうち、1問を選択して解答する形式であり、設問の課題に対して、自分の経験を元に約2,000~3,000文字程度の論述で解答します。
3問中1問は組込みシステムの出題が1問されることと決まっています。

ITストラテジスト午後II試験の基本対策

ITストラテジスト午後II試験の基本的な対策は以下のとおりです。この内容は別記事で詳細を解説します。

午後II対策の基本
  1. 論述のネタは事前につくっておく。5~6例作るのが望ましい。
  2. 試験問題が想定と異なっていたとしても、何とか準備していたネタが使えるように論述を構成する。その場の思いつきでの答案構成はしない。
  3. 論述は因果関係を明確にして記述する。わざとらしいくらい因果関係を意識して、つまらない文章でも構わない。
  4. 時間配分は非常に重要。最初20分で答案構成、残り100分で記述することをベースにする。
  5. 章立て、字下げ、禁則処理などを的確におこなう。
  6. できるだけ事前に3,000文字の論述を体験しておく。

この中で最も重要なのは、もちろん1ですね。
ITストラテジスト試験の論述を事前対策なしに合格されている方は尊敬します。

高度情報技術者試験はすべてそうだと思いますが、120分という時間は非常に短く、内段取りの外段取り化は必須であり、考える仕事は事前にやっておくべきです。

また、私はやりませんでしたが、6の論述を体験しておくことで当日の流れをシミュレーションしておくことも試験対策には有効だと思います。

2014年試験の問1の再現答案

問題

それでは、私の2014年秋期のITストラテジスト午後II試験の再現答案を公開します。選択したのは問1で、ITを活用した業務改革についての設問です。

問題文全文は、こちらのIPA(独立行政法人情報処理推進機構)の公開している過去問のリンクをご参照ください。

2014年秋期ITストラテジスト午後II試験問題

設問は以下のとおりです。

設問ア あなたが携わった、ITを活用した業務改革について、業務改革の背景にある事業課題を、事業の概要、特性とともに、800字以内で述べよ。

設問イ 設問アで述べた事業課題に対応するために、実施した業務改革とそのときに活用したIT、及び費用対効果の定量的な根拠とそのときに検討した内容について、800字以上1,600字以内で具体的に述べよ。

設問ウ 設問イで述べた業務改革の実施結果は、経営者にどのように評価されたか。更に改善する余地があると考えている事項を含めて、600字以上
1,200字以内で具体的に述べよ。

ITを活用した業務改革という、オーソドックスな内容でした。準備してきた論述のネタを使えた方も多かったのだろうと推測します。

再現答案

私の再現答案は、下記のとおりです。

設問ア(634字)

第1章 A社の事業概要および業務改革の背景にある事業課題
1-1A社の事業の概要および特性

(1)A社の事業概要
A社は、グローバルに展開する機械部品メーカーである。主要顧客は、半導体メーカーや、工作機械等を製造する産業機械メーカーである。昨今、競争のグローバル化にともない、世界各地に約20の生産拠点を展開している。

(2)A社の事業の特性
A社の事業の特性としては、製品の高い品質が要求されることはもちろんだが、それに加えて産業機械メーカー向けでは特に価格競争力が、半導体メーカー向けではコストダウン要請への対応に加えて、厳しい納期対応の遵守が必要となる。

1-2業務改革の背景にある事業課題

(1)積極的な設備投資のためのキャッシュフロー確保
A社は、特に半導体メーカー向けで顧客のグローバル展開に伴う要望に応じて積極的に設備投資をおこなう必要がある。顧客の要望を満たすための設備投資を継続的おこなっていくための、十分なキャッシュフローの確保が重要な事業課題となる。

(2)納期対応のための生産リードタイム短縮のための在庫管理
A
社は、半導体メーカーから特に厳しい納期遵守への要求がある。そのために、生産リードタイムの短縮が必要である。しかしながら、現状A社の生産拠点では在庫管理が万全ではなく、たとえば仕掛品在庫の所在地管理ができておらず、納期間近になって担当者が、在庫を製造現場へ探しに行くような事態が散見されていた。こうした在庫の管理業務負担の削減もまた、重要な事業課題である。

設問イ(1,182字)

第2章 実施した業務改革、活用したITおよび検討内容
2-1実施した業務改革と活用したIT

(1)生産拠点の在庫の可視化
私は、まずグローバルの各生産拠点の在庫の可視化をおこなう業務改革をおこなった。なぜならば、事業課題であるキャッシュフロー改善と在庫管理業務負担の削減には、在庫を目で見える管理をする必要があるからである。具体的には、システムで在庫の所在地を瞬時に把握し、在庫計画の立案を補助することが可能な生産管理システムを導入することで、在庫管理業務の改革をおこなった。

(2)統一した生産管理システムの導入
生産拠点の在庫の可視化をおこなうために、各拠点間で統一した生産システムを導入することとした。この生産システムは、市販されている標準パッケージを購入した上で、必要なカスタマイズをおこなうこととした。なお、このカスタマイズについてはシステム要件と標準パッケージの仕様を精査した上で、最低限のカスタマイズにすることとした。その理由は、カスタマイズを多くすることで開発工数が上がり、投資金額が想定以上に膨らんでしまう懸念があったこと、および過度なカスタマイズをおこなうことは、今後グローバルでシステム展開を実施することに向けた業務標準化の障害になることが想定されたためである。

2-2費用対効果の定量的な根拠と検討内容

(1)システム導入効果の定量的な把握
生産管理システム導入の効果の測定には、2つの指標を使用して評価することとした。1つはシステム導入による業務負担削減時間である。これは、在庫可視化によって改善される在庫管理担当者の管理業務や生産計画担当者の計画業務の削減時間を期待効果として設定し、実際にシステム導入で削減できた時間を調査して、システム導入前と比較した。
もう1つは棚卸資産回転率である。仕掛品在庫を可視化することにより、部品調達、生産指示など生産管理の精度が向上し、在庫効率がよくなることが想定される。そこで、棚卸資産回転率の改善をシステム導入による期待効果として設定し、システム導入前と導入後の棚卸資産回転率を比較した。 

(2)システム導入の投資対効果の根拠
私は、システム導入においては、投資に対する効果の根拠付けが重要であると考えた。なぜならば、システム導入プロジェクトにおいては、導入効果が明確でなく、システム導入が目的となってしまうことが起こりがちだからである。投資対効果の根拠付をおこなうことで、導入費用に対する効果の客観的な測定が可能となる。
今回のシステム導入では、初期導入工場のみでは投資金額をカバーできない可能性があったが、事後にグローバルの20工場への展開をおこなう際には経験効果により、スピードの速いシステム導入が可能になることが想定され、このグローバル工場への展開を計画に含めて、投資に対する十分な効果があることに説得力をもたせた。

設問ウ(681字)

第3章 業務改革に対する経営者の評価および更なる改善
3-1 業務改革に対する経営者の評価

(1)システム導入による業務改革の効果
今回のシステム導入による業務改革の効果を初期導入工場で測定した結果、評価基準である在庫管理業務時間の削減については1ヶ月当たり50時間以上の業務時間削減効果を得ることができ、また、棚卸資産回転率についても0.5ポイントの改善が確認できた。これはシステム導入計画立案時の想定を上回る効果であり、満足の行くものであった。

(2)経営会議においてシステム導入による改善結果の報告
システム導入による改善結果について、私はA社の経営会議においてシステム導入プロジェクトの経緯、導入業務の過程、および導入結果について説明した。その上でシステム導入プロジェクトの投資対効果の説明として、業務時間削減効果および棚卸資産回転率についての定量的な評価結果を報告した。投資判断に対する効果が説得力のある定量的な結果により説明されたことにより、経営陣からは本システム導入の効果について好評を得ることができた。

3-2 更に改善する余地があると考える事項

(1)更に改善する余地があると考える事項
今回のシステム導入は、初期導入工場における導入作業に要する時間が想定よりも多くかかっていた。システム導入においては想定されることではあるが、こうした想定をより正確に反映させたプロジェクト計画にすることが必要である。この反省を次回以降のグローバルの工場におけるシステム導入作業に反映し、導入ノウハウを横展開して導入作業を効率的に進めていくことで、効率的なシステム展開に役立てたい。

以上

試験結果

私の再現答案、いかがでしたでしょうか。
解答骨子と本試験中の記憶から作成していますので、細部については再現しきれていないかもしれませんので、その点はご了承ください。

再現答案を改めて見てみますと、恥ずかしい気分でいっぱいです。
ITストラテジストはITを活用した経営改善のビジョンを示す存在なので、夢いっぱいの計画を具体案を持って実現していく、というのがあるべき姿なのでしょうが、論述試験に望むと夢いっぱい、というか若干脳内がお花畑になっているような感覚です。

ただ、それくらいの成功物語を語れるようでないと、ITストラテジストとは言えないのでしょうね。

私の場合、いくつか自分で関与したプロジェクトについての論述のネタを用意してはいたのですが、それは使わず、実際は私が関わっていないプロジェクトについて想定で書きました。理由は、業務改革という設問にピッタリ当てはまりそうなネタは、再現答案で書いた内容だったからです。

自分でやっていないことを書いていいの?というご意見もあるかもしれません。

当然ですが、試験で問われているのは自らの経験として論述した内容ですから、本当に経験しているかは重要ではありません。
ITストラテジストとして説得力のあるストーリーを語れるかどうかが試されているのですし、いくら経験があっても、こうしたストーリーが語れない場合は、ITストラテジストとしては認めてもらえない、ということになるのだと考えます。

ちなみに論述は筆記でおこなうのですが、2,000字以上の筆記は慣れないと本当に手が痛いです。ただでさえ時間がなく、速く書かなければならないのに、答案構成を含め字を多く書くことによる疲労もかなりあるため、

この辺りは練習で鍛えられるようですが、パソコンを使用するのが当然の今の世の中で書く練習をたくさんするわけにも行かないでしょうから、本試験では手が痛くても合格に向けた執念で書ききる、ということになるかと思います。

私の試験結果はA評価でしたが、高度情報技術者試験の論述試験はA~Dの4段階評価がされるのみですので、A評価と言っても、その中でどのくらいのレベルに位置していたかはわかりません。

CとDの評価は論述の形式を成していないとか、内容以前の問題であるということを聞きます。一方、B評価とA評価の差はどのくらいなのかはわからないです。

ただ、やはり論述の中で論旨が一貫していることとか、設問に対してきちんと解答しているとか、原理原則が守られていれば、それだけでもA評価の獲得が期待できるのではないかと思います。そのためには、試験中の作業を少しでも減らすことが重要で、事前の準備はマストであると私は考えます。

これからITストラテジスト試験に望まれる方の参考になれば幸いです。

ここまでお読みいただきましてありがとうございました。

 

ABOUT ME
まっすー
中小企業診断士のまっすーです。 社会保険労務士やITストラテジストなど、多くの難関資格に合格した実績をベースとした資格試験の学習方法、ExcelマクロやPythonを活用した自動化の推進、経営に役立つ管理会計の理論解説、ITを活用した経営資源の有効活用などの情報を発信しています。
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