こちらの記事は次のようなことを知りたいという方に向けて書いています。
- ITストラテジスト午後II試験で論述ネタを考えたけど、問題に合わせて論述できない!
- ITストラテジスト午後II試験の設問に書いてあることは全て使わなければいけないの?
- ITストラテジスト午後II試験の論述を速く書くコツを教えて!
ITストラテジスト試験には2014(平成26)年秋期試験で一発合格しており、特にその際に考えた午後II論述試験対策がバッチリとはまりました。
今回は論述対策で考えた論述ネタと問題文・設問への対応方法を説明します。
ITストラテジスト試験については、少し古いですが私の2014年度の合格体験記と、午後II試験の再現答案をこちらのリンクで紹介していますので、よろしければご参照ください。
ITストラテジスト午後II試験の時間の使い方
ITストラテジスト午後II試験の概要はこちらの再現答案の記事で説明していますので、こちらもご覧ください。
試験時間120分のマネジメントが重要!
ITストラテジスト午後II試験は120分の制限時間で、2,200~3,000字程度の論述をおこないます。この120分には、当然ながら解答用紙への氏名や受験番号の記入、ITストラテジスト午後II試験特有の「構想、計画策定、システム開発などの概要」の記入も含みます。
- いかに早く解答する問題を選ぶか
- いかに早く「構想、計画策定、システム開発などの概要」を書くか
- いかに早く正確に答案構成を作成できるか
です。
これが30分で完了していれば、ITストラテジスト午後II試験は合格したも同然です。
試験最初の30分は、それくらい重要な時間です。
試験開始前にできることは準備しておく
試験時間は120分しかありません。試験前にできることは全てやっておきましょう。
- 論述ネタを用意して頭に叩き込んでおく(もし自分の経験ではなくても、自分の経験として語れるレベルにする)
- 「構想、計画策定、システム開発などの概要」を事前に作成して頭に叩き込んでおく
これだけでも、数分の違いは間違いなく出てきます。120分の中の数分は大きなアドバンテージになります。
論述ネタを用意して頭に叩き込んでおく
事前に5~6つの論述ネタを作っておきましょう。
こちらの記事で私が実際に作成したネタを公開しています。ネタの作成方法も記載していますので、よろしければご参照ください。
これらのネタをしっかりと頭に入れておいて、いつでもすぐに出せるようにしておきましょう。
「構想、計画策定、システム開発などの概要」を事前に作成して頭に叩き込んでおく
「構想、計画策定、システム開発などの概要」はそのものが採点対象ではないかと思いますが、採点者が採点時に参考として使用するようです。
何も書いておかないと、どのような減点をされるかわかりませんので、必要最小限の努力で、かつ、きちんと書いておく必要があると認識しましょう。
論述後に書く場合、時間が足りなくなる可能性があるため、試験開始からわずかな時間で書いてしまう方がいいと思います。悩まずに一気に書き上げられるように、事前に記載事項を予習して頭に入れておきましょう。
ここで時間をかけてしまうのは本当にもったいないです。
試験開始後、問題文をざっと見て解答する問題を選択する
試験が開始し、氏名・受験番号・生年月日を記載したらすぐに問題文を見ます。
読むではなく、見るですのでご注意ください。
ざっと見て、準備してきたネタが使えそうな問題をすぐに判断します。
ITストラテジスト午後II試験では、IoT時代を意識した組込みシステムに関する問題が必ず出ますので、それに絞るという作戦もあるとは思いますが、いずれにしても問1~3の問題を1~2分でざっと見てどれが使えるかをさっと判断しましょう。
この選択に時間をかけ過ぎてしまいますと、時間が足りなくなる恐れがありますので、じっくり読み込むことは避け、あくまでさっと流し見する程度にしてください。
(参考)問題冊子は切り離せないので注意
若干余談になりますが、今のITストラテジスト午後II試験では、問題冊子を切り離してはいけません。
私が受けたときより前の時代はやはり切り離し禁止だったようで、なぜだかわかりませんがコロコロ変わっている印象です。
具体例で紹介~論述ネタと設問の結びつけ~
さて、これから論述ネタと設問を結びつけながら、解答骨子を作成している作業に入っていきます。
聞かれたことに答えることの重要性
記述・論述試験ではこの設問解釈が非常に重要です。難しい試験問題にぶつかると、得てして忘れがちになってしまうのですが、試験で最も重要なことは、
聞かれたことに答える
です。これはどんな試験でも等しく重要であり、全てと言っても過言ではないと思います。記述式や論述式の問題演習は、この聞かれたことに答えることのシミュレーションを、何度何度も繰り返しやって、考えなくてもできるように定着させるようなイメージです。
その意味では、何を書くかよりも何を聞かれているかを考える練習のほうが重要と考えます。
書き方はある程度練習すればうまくなりますが、聞かれているかを考えるのは読解力が重要で、鍛えるにも時間がかかります。
何を聞かれているか、を考えることを私は設問解釈と呼んでいます。
設問解釈を具体例で解説
さて、少し古い事例にはなりますが、私の合格時の再現答案もあることから2014年のITストラテジスト午後II試験の問題を例に設問解釈をしてみましょう。
問題文はこちらになります。ITを活用した業務改革について述べる問題です。
考え方はそれぞれあると思いますが、私としてはこの問題文自体は、それほど重要であるとは思っていません。各種事例が例示されていますが、これは自ら論述ネタを用意してあれば読まなくても大丈夫です。
どの問題でも自分の用意してきた論述ネタが使えないような場合、最後の最後の手段として、この事例を活かして論述の解答を作成することも考えられますが、恐らく非常に厳しい戦いとなり、あくまで最終手段です。
一方で、設問は以下のア~ウとなります。こちらは設問は穴が空くほど読む必要があります。
設問ア あなたが携わった、ITを活用した業務改革について、業務改革の背景にある事業課題を、事業の概要、特性とともに、800字以内で述べよ。
設問イ 設問アで述べた事業課題に対応するために、実施した業務改革とそのときに活用したIT、及び費用対効果の定量的な根拠とそのときに検討した内容について、800字以上1,600字以内で具体的に述べよ。
設問ウ 設問イで述べた業務改革の実施結果は、経営者にどのように評価されたか。更に改善する余地があると考えている事項を含めて、600字以上
1,200字以内で具体的に述べよ。
大原則として、
聞かれたことに答える=設問の要素は全て使う
です。これだけは絶対に守ってください。守らなければ不合格になると思っていいです。
さて、ここまで読んだ時点で、私は論述ネタとして準備してきた以下のネタを活用しよう、ということを決めています。
- 背景・課題
競合他社との競争が激しく、投資のためのキャッシュフロー確保、生産リードタイムの改善が必要
生産部門では在庫の所在が把握できていないことによる生産遅れが発生している - 対応策、検討内容
生産システムを在庫の位置情報とリンクさせ、在庫が見える仕組みを導入することで、生産リードタイムの短縮、とする。
システム対応が煩雑となる生産部門の反発が想定され、なぜこれをおこなうかという教育が必要 - 結果、評価
棚卸資産回転率の改善、生産リードタイムの改善、在庫管理業務の必要時間の削減の結果を得られた
問題文をざっと見たときに、業務改革と生産在庫管理レベルの向上がマッチする、という想定を済ませています。
設問アの設問解釈、答案構成
設問アは以下のように分解し、論述ネタとの結びつきを考えながら答案構成を作成します。
設問ア あなたが携わった、ITを活用した業務改革について、③業務改革の背景にある事業課題を、事業の①概要、②特性とともに、800字以内で述べよ。
ここでは、事業の概要と特性をそれぞれ語ること、および業務改革の背景にある事業課題を複数語ることを考えます。全部で4つに分けて、それぞれ150~200字で書けばいいことを想定します。
この分割の考え方は、字数を稼ぐという観点では、細かく分けておいたほうが有利になりますので、できる限り細かく分けておきます。
特に章立てして見出しをつけて書く場合、それぞれで1行稼げますしね。
答案構成自体は詳細を書く必要はありませんが、私の本試験時のメモを元に、答案構成を再現します。色をつけた部分は、設問から持ってきている部分で、章立てする際に意識して設問の内容を取り込んでおくことで、設問どおりに解答していることをアピールすることが可能と思っています。
第1章 A社の事業概要および業務改革の背景にある事業課題
1-1A社の事業の概要および特性
(1)A社の事業概要・・・①
グローバルに展開する機械部品メーカー、主要顧客、20の生産拠点
(2)A社の事業の特性・・・②
産業機械メーカー⇨価格競争力 半導体メーカー向け⇨コストダウン、厳しい納期対応
1-2業務改革の背景にある事業課題・・・③
(1)積極的な設備投資のためのキャッシュフロー確保
半導体メーカー向け設備投資必要。十分なキャッシュフローの確保が重要な事業課題
(2)納期対応のための生産リードタイム短縮のための在庫管理
半導体メーカーから特に厳しい納期遵守への要求⇨生産リードタイムの短縮必要
現場の問題点、在庫を探しに行く、管理業務の軽減
実は設問アは書きやすいです。なぜなら、背景や事業環境、経営課題などの困りごとについては、いくらでも情報の追加が可能だからです。
答案構成としては、設問アを一番最後に持ってきて、設問イから開始するという指導方法もあるようです。私としてはどちらでもいいと思いますが、いずれにしても設問アで止まるようであれば、ちょっと最後まで書ききるのは難しいかな、と考えます。
設問イの設問解釈、答案構成
続いて設問イです。ITストラテジスト午後II試験の本丸ですね。字数制限も800~1600字と、最長の設問です。
設問イ 設問アで述べた事業課題に対応するために、①実施した業務改革と②そのときに活用したIT、及び③費用対効果の定量的な根拠と④そのときに検討した内容について、800字以上1,600字以内で具体的に述べよ。
第2章 実施した業務改革、活用したITおよび検討内容
2-1実施した業務改革と活用したIT
(1)生産拠点の在庫の可視化 ・・・①
業務改革=各生産拠点の在庫の可視化をおこなう
事業課題(キャッシュフロー改善・在庫管理業務負担の削減)
具体例=在庫の所在地把握、在庫計画の立案補する生産管理システム導入
(2)統一した生産管理システムの導入・・・②
各拠点間で統一した生産システムを導入
方法は標準パッケージ+最低限のカスタマイズ
理由=過分なカスタマイズは投資金額上がる、今後グローバル展開の障害
2-2費用対効果の定量的な根拠と検討内容・・・③
(1)システム導入効果の定量的な把握
生産管理システム導入の効果⇨在庫管理担当者の管理業務や生産計画担当者の計画業務の削減時間。仕掛品在庫可視化による部品調達、生産指示など生産管理の精度向上、棚卸資産回転率向上。在庫把握能力の向上により期待できる生産リードタイムの短縮日数。
(2)システム導入の投資対効果の根拠
システム導入が目的となりがち⇨投資に対する効果の根拠付けが重要、客観的な指標
グローバル工場への展開を見据えた投資効果の測定、説得力
設問イは、実際に実行した行動の部分になります。具体的な行動を示すことで論述に現実性をもたせる必要があるのですが、800字以上書かなければならないので、できるだけ多くの記述する候補を答案構成に入れておいたほうがいいです。
あとから字数不足で付け足しで論拠を入れてしまうと、論理的に破綻したり、読みにくくなってしまう可能性がありますので、できるだけこの答案構成時にアイディアを絞り出しておきましょう。私の本試験での対応も、「在庫把握能力の向上により期待できる生産リードタイムの短縮日数」を答案構成に入れていましたが、結局は使いませんでした。
使わない事自体は問題ないので、例えば「定量的な効果測定」とか、「検討したシステム導入方法」とか「システム選定のためにおこなった調査」とか、複数挙げられるものは3個位挙げられるようにしておくと、設問イの解答で字数が足りずに困るということはなくなると思います。
設問ウの設問解釈、答案構成
いよいよ結論、設問ウです。設問イとの対応関係で記載できると説得力が上がりますので、設問イを意識しながら答案構成をしていきましょう。
設問ウ 設問イで述べた業務改革の実施結果は、①経営者にどのように評価されたか。②更に改善する余地があると考えている事項を含めて、600字以上
1,200字以内で具体的に述べよ。
第3章 業務改革に対する経営者の評価および更なる改善
3-1業務改革に対する経営者の評価・・・①
(1)システム導入による業務改革の効果
在庫管理業務時間の削減=50時間以上/月、棚卸資産回転率=0.5ポイント改善⇨想定を上回る効果、満足
(2)経営会議においてシステム導入による改善結果の報告
経営会議で経緯、導入過程、導入結果について説明
上記定量的な評価結果報告⇨定量的結果で説得力あり、経営陣から好評を得た
3-2更に改善する余地があると考える事項・・・②
(1)更に改善する余地があると考える事項
初期導入工場の導入時間が想定より多かった⇨次回以降の導入に反映、ノウハウの横展開による効率的な導入実施
結論の部分は成果をしっかりとアピールすることが重要です。論述の展開にもよりますが、良い成果を挙げることができた、という方が読んでいる方も気持ちがいいのではないかと思いますので、成功体験の論述であれば、大々的に成果をアピールしてみましょう。
まとめ
今回のまとめは、一言です。
聞かれたことに答える=設問の要素は全て使う
これが本当に大事です。
ITストラテジスト午後II試験は、試験開始30分で論述ネタと設問解釈をきちんと結びつければ十分合格できると思います。
120分を使って論述することを練習するのはハードルが高いかも知れませんが、30分で答案構成をするところまでは何度も練習可能であると考えます。
試験前にはある程度時間をとって、この答案構成の練習をしておいて、試験当日の初めて見る問題文、設問文に対する対応力を上げておきましょう。
ここまでお読みいただきましてありがとうございました。