こちらの記事は次のような方のニーズに応えるために書いています。
- ITパスポート試験を受けようと思うけど、この資格で評価されるかな?
- ITパスポート試験は受ける価値があるかな?
- ITパスポート試験と基本情報技術者試験の難易度はどれくらい違う?
資格取得には時間やお金などのコストがかかるので、資格の価値については常にいろいろな研究をしています。私は基本情報技術者資格を取得するときにITパスポート試験との比較検証をおこない、結果的に私にはITパスポート試験は不要と判断しました。これからITパスポート試験よりも基本情報技術者試験をオススメする理由をご説明します。
まず最初にお話しておくと、私はどんなことであっても、学ぶことは人間にとって、人生を豊かにする最高の喜びであり、生きがいであると考えています。
学ぶことそのものを無駄とか、意味がないということは決してなく、資格試験としての価値があるのか、という視点で今回語っておりますのでご了承ください。
ITパスポート試験とは?
ITパスポート試験の概要
ITパスポート試験は2009年に創設された、経済産業大臣が実施する情報処理技術者試験の一区分である国家試験です。かつて実施されていた初級システムアドミニストレータ試験(初級シスアド)の後継試験という位置づけと言ってもいいですが、初級シスアド試験に比べると難易度は低くなっているようです。
ITパスポート試験は1~4のスキルレベルを設定している情報処理技術者試験制度のスキルレベル1にします。ITスキルのスタート資格ということですね。
対象者像は対象者像は「職業人が共通に備えておくべき情報技術に関する基礎的な知識をもち、情報技術に携わる業務に就くか、担当業務に対して情報技術を活用していこうとする者」ということで、IT業界というよりは、一般的な社会人向けの資格といってもいいかもしれません。
試験はすべて4肢択一式、120分で100問、1問72秒というかなり短めな印象です。
ストラテジ系、マネジメント系、テクノロジ系のそれぞれで正答率30%以上でないと足切りがあり、合計で60%以上の正答率で合格となります。
出題範囲自体は、後述する基本情報技術者試験とほぼ変わらないということですが、難易度において差をつけているようです。
試験はCBT(Computer Based Testing)方式で、自分の都合のいい時間帯、試験会場を選択できるというのも特徴です。
なんと、ITパスポート試験は特設サイトがあります。
ITパスポート試験Webサイト
広く門戸を開いているという印象を受けますね?日商簿記-1グランプリで「ソードアート・オンライン」や「僕たちは勉強ができない!」などのキャラクターを起用しているのを見たときもすごいなと思いましたが、Iパスも頑張っているようです。
上峰亜衣さんは社会人なんですね。23歳、商社の経営企画部勤務ということで、こういう非IT系の方向けの資格、ということなのかもしれません。
ITパスポート試験の難易度
ITパスポート試験ですが、令和元年の実績で117,923名が応募し、合格率は54.3%でした。資格試験としては合格率は高め、というか高すぎますね。
ファイナンシャルプランナー3級やビジネス実務法務検定3級などが合格率70%程度ということで、それよりは低いのですが、50%近くの合格率の場合、難易度そのものの問題よりも、試験の質としてなんとなく無勉強でもかなり勝負になるレベルなのではないかと思ってしまいます。
これだけ合格率が高いと、せっかく取得しても周囲との差別化ができない気がします。
過去問はこちらのリンクで見ることができます。
ITパスポート試験過去問題
ざっと見てみると、実際、勉強しなくても結構解答できそうな問題があることに気づくと思います。情報技術者試験といいながら、100問中テクノロジ系は45問で、文系科目ともいえるストラテジ系35問、マネジメント系20問の方が多くなっています。
勘のいい方なら、過去問を何回分か解いておくだけで、ほぼ合格点が取れるレベルだと思います。もちろんITを含めたビジネスレベルの確認という意味ではいいのかもしれません。
基本情報技術者試験とは?
基本情報技術者試験の概要
基本情報技術者試験は、ITパスポート試験がスキルレベルの1に対し、ひとつ上のスキルレベル2の資格です。
対象者像は「高度 IT 人材となるために必要な基本的知識・技能をもち,実践的な活用能力を身に付けた者」となっています。
午前試験と午後試験に分かれており、概要は以下のとおりです。
【午前試験】
試験時間150分。四肢択一式(マークシート使用)で80問出題され全問解答。素点形式で採点され60点以上で合格(満点は100点)。
- 問1-問50:テクノロジ系(コンピュータ科学基礎・ハードウェア・稼働率・ソフトウェア・論理回路・データベース(SQL、正規化)・ネットワーク・セキュリティ・設計)
- 問51-問60:マネジメント系(DFD・開発規模、工数など)
- 問61-問80:ストラテジ系(全体計画立案・業務改善・契約タイプ・経営戦略・ABC分析・利益や費用の計算・関係法規など)
【午後試験】
試験時間150分。素点形式で採点され60点以上で合格(満点は100点)。
- 問1:情報セキュリティに関する問題(必須解答)。20点満点。
- 問2-問5:「ソフトウェア・ハードウェア」「データベース」「ネットワーク」「ソフトウェア設計」「マネジメント・ストラテジ」などの分野から4問出題され、そのうち2問を選択する。各15点満点(計30点満点)。
- 問6:擬似言語と言われる簡略化されたコンピュータ言語を用いた応用問題(必須解答)。25点満点。
- 問7-問11:ソフトウェア開発、プログラミングに関する問題。C言語、Java、Python、アセンブラ(CASL II)、表計算のうち1問を選択する。いずれも(表計算の問題も含め)論理的思考力を要求される。25点満点。
Wikipedia基本情報技術者試験より
基本情報技術者試験の詳細は、私の合格体験記にも記載しています。よろしければご参照ください。
基本情報技術者試験の難易度
もちろん、このスキルをすでに身につけている方であれば合格は余裕、というレベルだと思います。ですがそうでない場合、このアルゴリズムの知識は習得の手間がかかるためある程度時間をかけて学習する必要があると考え、その意味では難易度は高いです。
私がアルゴリズムを学習した際の例をこの記事で説明していますので、よろしければご参照ください。
ITパスポート試験より基本情報技術者試験を目指したほうがいい8つの理由
結論として、私はITパスポート試験を受けるのであれば、最初から基本情報技術者試験を目指した方がいいと考えます。
理由は8つあり、それぞれ解説していきます。
ITパスポート試験は簡単すぎる
ITパスポート試験は簡単すぎます。曲がりなりにも情報技術者試験の国家試験ということで、多くの方が受験しているのですが11万人近くが受験して約50%が合格しているというのは、ほぼ無勉強でも合格している方が相当数いるのではないか、と思われるレベルです。
簡単すぎる試験は取得する価値があるか疑問です。
基本情報技術者試験は合格率も30%程度とそこまで高くはなく、簡単な試験ではありません。そもそも受験者の母体が違っていて、基本情報技術者試験はIT業界の最前線で働く方々が多数受験するため、合格率を単純に比較する以上の差があると考えます。
ITパスポート試験は評価されない
確信的に言います。ITパスポート試験は評価されません。
資格のことを知らない人の場合、基本情報技術者試験でもITストラテジスト試験でも評価しませんのでもういいのですが(会社勤めをしていればわかりますが、大多数の方はそうです)、資格のことを知っている人の場合、簡単すぎるITパスポート試験は評価しません。
基本情報技術者試験の場合、知っている人なら必ず評価すると考えます。持っていて当然、という業界もありますが、いずれにしても評価にはつながります。
ITパスポート試験はスキルレベルを証明する試験ではない
資格試験全般がそうだと言われればそれまでなのですが、ITパスポート試験は正直なところ何のスキルレベルも証明できないと考えます。
スキルレベルを評価するというよりは、ITに関する一般常識がある人レベルの判定をする試験のように感じます。
基本情報技術者試験レベルであれば、たとえプログラミングで表計算を選択していっとしても、一定レベル以上のアルゴリズムの知識はあるだろうという想定ができますが、ITパスポート試験で問われるレベルは広いものの浅すぎます。
ITパスポート試験は努力が認められない
ITパスポート試験は、人によっては無勉強、恐らく1、2日過去問を学習しただけで合格可能なレベルです。
合格に必要な知識が詰まったテキストを1ページめから読み始めていくような学習法であればそれなりに時間がかかってしまいますが、過去問をインプット学習として、過去問の内容から覚えていけば多分数回分の過去問を解くだけで合格レベルまで到達してしまう可能性があります。
資格取得のハードルが低すぎるため、努力をアピールしようにも難しいと考えます。
基本情報技術者試験は、午後試験で超初歩的とはいえ、アルゴリズムに関するスキルがなければほぼ合格は不可能なのでそれを身につけた努力は認められると考えます。
ITパスポート試験は何度も受けられるので価値が低い
いわゆる難関資格といわれる資格試験の合格がなぜ評価されるかというと、挑戦者に対する合格率の低さや、年に1回や多くて2回など、そもそものチャンスが少ないという、ハードルの高さがあると思います。
ITパスポート試験は何度でも受けられます。試験結果もすぐ出るので、不合格とわかったらまた申し込めばいつかは合格できるでしょう。そうすると、高難度資格試験であれば必ず出てくる受験までの待ち時間の問題がほぼ無視できてしまうので、合格して当然、という試験になってしまいます。
ちなみにITパスポート試験同様、CBT試験で実施される基本情報技術者試験は、設定された受験期間中に1回しか受験できません。恐らく今後も資格の価値を維持するために年2回のチャレンジしか認めないでしょう。受験者が減れば増やす可能性もあるかもしれませんが。
何度も受験ができてしまうと資格の価値が落ちてしまう、これはやむを得ないと考えます。
アルゴリズムをしっかりと学べばスキル大幅アップ!
基本情報技術者試験といえばアルゴリズムです。私もこの考え方の習得に非常に手間取りました。ですが、これをマスターできたことで、pythonなどで簡単なプログラムならば作成可能ですし、Excelマクロは数々の業務改善を可能なレベルまで昇華できています。
せっかく学習するのであれば、ITパスポート試験を目指すよりもそのまま基本情報技術者試験を目指してアルゴリズムの習得まで含めて学習してしまったほうが効率的だと思います。
ITパスポート試験は中途半端なところで終わってしまう印象です。もちろん先にITパスポート試験を受けてから基本情報技術者試験に向かってもいいのですが、それならば最初から基本情報技術者試験を受験する方がいいと考えます。理由は上記のとおり、ITパスポート資格を取得すること自体にはあまり意味がないからです。
例えが難しいですが、公認会計士試験を目指す人が日商簿記1級を取得する場合や、司法書士を目指す人が行政書士資格を取得する場合は、もし最高目標である公認会計士や司法書士試験合格が達成できなかった場合、日商簿記1級や行政書士資格を証明することが就職で有利に働く部分があるかもしれません。
ですが、ITパスポート試験そのものでは評価されませんので、先に取得しておく意味はほぼないと言っていいと思います。
AI時代には非IT人材も基本情報技術者くらい必要
すぐにはそんな時代は来ないかもしれませんが、AI時代到来が叫ばれてから結構時間が経っています。まだまだ「なんちゃってAI」ばかりという批判もありますが、着実にAI技術は進化しています。
2020年から、日本の小学校でプログラミング教育が必修化されたのも、こうしたAI化、自動化に対応するための動きであると私は考え、当然ながら社会人のスキルとしてIT技術というのはますます必要なものになってくると考えます。
そうしたIT技術の習得の証明としては、最低限基本情報技術者試験レベルは取得置きたいところであると私は考えます。
基本情報技術者試験を取得すればIT系業務に就くチャンス
ITパスポート試験での効果はわかりませんが、基本情報技術者試験に合格した私は社内でITプロジェクトへの参画を指示されるなど、IT系の業務に関わることが増えました。
基本情報技術者資格を持っていることは、非IT部門の人でも、ITの素養をもっていることをIT部門に対してアピールすることが十分に可能です。そして、自分がIT業務経験が浅かったとしても、資格で証明できる最低限のスキルがあることで、自信を持つことができます。
「IT業務は資格でするものではない」というのはある意味真理ですが、基本情報技術者すら受からないIT担当者の技術レベルに疑問符がつくのも真理です。是非、自信を持ってIT業務にも関わっていっていただきたいと思いますし、必ずやそういったお誘いが来ると思いますよ。
基本情報技術者試験というのは、それくらい、IT業界にとっては当たり前でも非ITの方にとっては特別な資格であると言えると思います。
まとめ
ITパスポート試験と基本情報技術者試験をご紹介し、挑戦するのであれば基本情報技術者試験である、ということを以下の7つの理由で解説しました。
- ITパスポート試験は簡単すぎる
- ITパスポート試験は評価されない
- ITパスポート試験はスキルレベルを証明する試験ではない
- ITパスポート試験は努力が認められない
- ITパスポート試験は何度も受けられるので価値が低い
- アルゴリズムをしっかりと学べばスキル大幅アップ!
- AI時代には非IT人材も基本情報技術者くらい必要
私は基本情報技術者試験に合格して、スキルの広がり、自動化の実践などで人生が変わったと言ってもいいくらいですので、是非、情報技術者試験を目指してアルゴリズムを含め学習し、社会人としてのスキルの幅を広げていきましょう!
ここまでお読みいただきましてありがとうございました。