こちらの記事は次のようなことを知りたいという方に向けて書いています。
- 中小企業診断士1次試験の科目別の勉強法を知りたい!
- 中小企業診断士1次試験はどんな順番で勉強すればいい?
- 中小企業診断士1次試験の難易度は?
中小企業診断士1次試験は2ヶ月半程度の学習で合格していますので、短期合格のための学習方法には自信があります。今回は中小企業診断士1次試験の科目別の勉強法について説明しますね。
中小企業診断士1次試験の概要
2日間にわたる7科目の試験
中小企業診断士1次試験は8月(2020年は7月)におこなわれます。2日がかりの試験で、7科目を受験します。試験科目と試験時間は以下のとおりです。
7科目の試験で、平均60点以上が取れれば合格です。
ただし、1科目でも40点未満だと足切りにより、不合格になってしまいます。得意科目だけできればいい、という試験ではないため、不得意科目を作らない努力も必要になってきます。
また、不合格になってしまっても、60点を超えた科目は科目合格として認められます。科目合格した科目は、その後2年間は試験の免除が認められます。そのため、3年間かけて1次試験合格を目指すこともできるわけです。
1次試験科目と2次試験科目の関係
以下の図では、1次試験科目と2次試験科目の関係を示しています。1次試験7科目は、2次試験で深く関係するものと、少し関係あるもの、あまり関係ないものに分かれます。
まずは1次試験合格が当面の目標にはなりますが、2次試験も見据えた計画的な勉強を進められると、効率的な試験対策ができます。
1次試験の合格率
1次試験7科目の科目別合格率を見てみましょう。
令和2年の合格率が驚きの40%超えという結果でしたが、それを除けばおおむね20%前後の合格率で推移しています。
中小企業診断士1次試験は一部得点調整がある場合もありますが、基本的には絶対評価であり基準点である60点を超えれば合格できますので、ある程度合格率は安定する傾向にあると言っていいかもしれません。
次に科目別合格率を見てみます。この科目合格率には、上記の1次試験合格者を含みません。そのため、極端に低い合格率が出現する年度も見られます。
1次試験合格はすべての科目で60点を超えている必要はなく、受験した科目の平均点が60点を超えていれば合格となります。つまり低い科目合格率の科目、恐らく難易度の高い科目があったとしても、他の科目でカバーすればOKです。
科目合格率に関して言うと、ここ5年では経済学・経済政策と経営情報システムの合格率が高い数値で推移していることがわかりますが、それ以外はかなり変動が激しいです。
10年間で見れば安定しているような科目は1つもないため、中小企業診断士1次試験は、どれか1つの科目を得意科目としてそこで稼ぐというよりは、全科目を満遍なく学習して取りこぼしを防ぐ方が、合格の可能性は高いと考えます。
合格率のデータをグラフにしてみました。ちょっと分かりづらいですが、10年間の推移で見ると、やはり上下の変動が激しいことがわかります。
1次試験7科目の科目別勉強法
ここからは、1次試験7科目の科目別勉強法を説明します。
1次試験7科目は、計算を含む内容をよく理解していなければ解答までたどり着けないものと、暗記で対応できるものに区分できます。暗記が重要なものは、暗記さえ出来ていれば解答が可能であるため、極端な言い方をすれば試験当日に覚えてさえいれば問題ありません。
言い方を変えれば、暗記が重要なものはあまり早くに完璧に暗記を済ませても、試験当日に忘れていては意味がありませんので、試験の直前期に完成することを前提に、多少遅めに着手するのでも大丈夫です。
一方で、内容理解が重要なものについては早めに勉強に着手して、わからないところを徹底的に潰し込んでいくことが必要です。試験直前で理解を深めようとしても間に合わない可能性があります。
この前提を踏まえた上で、各科目について解説します。上記の図の上から説明をしていきます。
財務・会計
財務・会計の特徴および対策は以下のとおりとなります。
- 1次試験でも2次試験でも問われる中小企業診断士試験最重要科目
- 科目合格率はここ5年で大きく変動中
- 過去問アウトプット学習で頻出論点から理解を深めていく
- 過去問の他、問題集を活用して演習をこなして経験を積む
- ポケットブックも活用してある程度の出題範囲を抑える
- 日商簿記検定は中小企業診断士試験対策としてはオススメしない(資格取得自体は超オススメ)
計算問題を含めた試験対策にはかなりの時間を要します。そして2次試験でも重要な科目ということもあり、1次試験で学習した内容は2次試験でも十分に活用可能です。
とにかく早めの着手が重要であり、演習をたくさんこなして試験の対応力を上げていくことが合格への近道です。
日商簿記検定の受験の検討も含め、詳細な内容はこちらのリンクで解説していますので、よろしければご参照ください。
運営管理
続いて、運営管理です。こちらも計算問題が多く出題される科目です。
- 1次試験でも2次試験でも必要な診断士試験の重要科目
- 近年合格率が乱高下しており、しっかりとした対策が必要。特に計算問題が多いと難易度が高くなるため要対策
- 過去問アウトプット学習で知識の定着を図る
- 過去問をやった後は、問題集でアウトプット練習、重要論点を暗記する、などの学習
計算問題は年度によって出題数が変わり、出題が多くなると科目合格率が減少する傾向にあり、難易度が上昇していることが伺えます。
範囲がかなり広いということもあり、財務・会計と同様、早めに着手して過去問を多く解いていくことが試験合格の鍵です。運営管理についての解説記事はこちらになります。
経済学・経済政策
続いて、経済学・経済政策です。今まで勉強したことが無い方の場合、理解するのに多くの時間がかかります。
- 1次試験のみ対策必要な科目であり、時間をかけ過ぎない学習を考えるべき
- 科目合格率はここ5年とも20%超と高め安定。ただし診断士試験はいきなり難易度が上がることもよくあるので油断は禁物
- 過去問アウトプット学習で理論をしっかりと抑える。特にグラフ上での動き(曲線が動くと他にどのように影響するか?など)の理解が重要
- 過去問をやった後は、問題集でアウトプット練習しつつ理解を深めていく
経済学・経済政策は、財務・会計や運営管理とは違い、1次試験のみの対策となる科目です。そのため、できるだけ労力をかけずに対策していところですが、初学の場合、理解するにはなかなか骨が折れます。こちらの記事では、例題を元にして、過去問アウトプット学習による経済学の学習方法についてまとめています。
企業経営理論
企業経営理論は、7科目の中で内容理解と暗記のどちらもそれなりに重要という、中間に位置する科目と言えます。
- 1次試験でも2次試験でも必要な診断士試験の重要科目
- 文章が長く、日本語が難しいのが特徴。ただし暗記に頼らず常識論で解答可能な問題も多い
- とにかく早く過去問アウトプット学習を始める(問題の言い回し対策)
- 過去問をやった後は、問題集でアウトプット練習、重要論点を暗記する、などの学習
中でも日本語が難解というのが企業経営理論の特徴で、できるだけ本試験レベルの問題を早く解いて、難しい言い回しに慣れておくことが重要です。
国家試験では数多くの難しい日本語の言い回しが使われますが、どんな試験であっても、基本的に過去問と同じようなレベルの問題が出題されますので、過去問に触れておくことが大事です。こちらの記事では、過去問学習の重要性を紹介しています。
経営法務
経営法務からは、暗記のほうが重要な科目になってきます。とにかく覚えたもの勝ち、という科目になりますが、一方で暗記には時間がかかり、多くの時間を割くわけにも行きませんので、バランスが重要となります。
- 2次試験はほぼ関係ないため、1次試験対策のみでOK
- 科目合格率は10%程度と低く難易度が高い試験
- 過去問アウトプット学習で会社法や知的財産権などの頻出論点と周辺知識を抑える
- 過去問をやった後は、問題集でアウトプット練習しつつポケットブックで暗記
- 法改正はよく狙って出題されるので注意!
- 経営法務のために他資格を受験するのはオススメできない
経営法務の知識は、2次試験ではほとんど必要ありませんので、1次試験対策として割り切って、短期間に一気に覚える、という学習法が有効です。その一方で、暗記をするためには出題範囲をしっかりと把握しておくことが重要ですので、過去問を早めに解き始めることも大事です。
こちらの記事で経営法務の特徴および対策を説明しています。
経営情報システム
経営情報システムは、ここ最近難易度が低くなっていますが、いつまたレベルが上がるかは未知数です。データベースや表計算のようにごく一部のテーマ以外は、ほぼ暗記で対応可能です。
- 2次試験にも関係はあるが、1次試験対策を考ればOK
- 科目合格率はここ4年は20%超で高め安定。ただし、いつ5・6年前の1桁科目合格率の難易度に戻るかわからないので油断は禁物
- 過去問アウトプット学習で頻出論点と周辺知識を抑える
- 過去問をやった後は、問題集でアウトプット練習しつつポケットブックで暗記
- 略語は正式名称がわかれば解答可能なものも多いため、積極的に覚えていく
- 免除を狙わないのであれば、情報技術者試験まで受ける必要はない
経営情報システムは略語の正式名称の英語を覚えていれば解答可能な問題が結構出題されますので、覚えておくことをオススメしています。あとは過去問の範囲を元にして、暗記を進めていきましょう。
こちらの記事では、情報技術者試験の資格取得の要否の検討を含め、経営情報システムの対策について説明しています。
中小企業経営・中小企業政策
中小企業経営・中小企業政策は中小企業診断士1次試験7科目の中で、過去問アウトプット作戦が通用しない唯一の科目です。この理由は、毎年試験範囲(中小企業白書や中小企業施策利用ガイドブック)が変更されるためです。
かといって、試験範囲を網羅的に勉強することも難しく、いかにポイントを絞った勉強ができるかが重要となります。
- 2次試験でも関係はあるが、試験対策としては1次試験に割り切ってもOK。
- 科目合格率はここ5年間では高いとは言えない状態。ただししっかりと対策すれば合格は十分に可能
- 過去問アウトプット学習は勘を鍛える意味でも取り組みたい。ただ最新情報を反映した問題集や、テキストでの暗記も取り入れることで合格確率向上を目指すべき
- 中小企業白書・中小企業施策利用ガイドブックはボリュームが多すぎるため参考程度と考える
- 直前期はとにかく暗記で1問でも多く取る努力をする。試験当日の暗記も効果あり
試験勉強の方法が決まれば、あとはひたすら暗記するのみです。
ちなみに、こちらの記事では中小企業経営・中小企業政策における、他の6科目とは異なる過去問対策の重要性について述べています。資格試験において、過去問というのは過去出題された範囲を知るだけではなく、出題の方法、選択肢の作り方、引っ掛け方など、学ぶべき内容は多く、研究の価値があると考えます。
過去問アウトプット学習法のススメ
以上、7科目の勉強法について述べてきました。
ここで、何度も登場する過去問アウトプット学習についてまとめておきたいと思います。
過去問アウトプット学習というのは、初めて学習する科目・範囲について、何の予備知識もないところからいきなり過去問を解き始めて、インプットとアウトプットを同時に行うことをいいます。
通常であれば、インプット学習→アウトプット学習→インプット学習・・というように、インプットから始めて、アウトプット学習で問題を解いて、できなかったところを再度インプットする、というようなステップで学習すると思います。
ですが過去問アウトプット学習では、
とにかく、資格試験学習の最初から過去問を解きまくる!!
という方法を採用します。
資格試験に最短で合格するためには、この方法がベストであると私は確信しています。
理由は3つあります。
- 本試験レベルを早めに知ることができるため、対策を考えながら学習できる
- 実際に出題された論点から学習していくので効率的な学習が可能
- 私がこの方法で多くの資格試験に短期間合格できているから
最後のはオマケですが、今の私は過去問アウトプット学習しか考えられません。恐らく通常の学習時間に比べて2~3倍のスピードで学習を進めていけると思っています。
こちらで過去問アウトプット学習については説明していますので、よろしければご参照ください。
まとめ
以上、中小企業診断士1次試験7科目の対策について説明してきました。ここでまとめておきたいと思います。
- 内容理解の財務・会計、運営管理、経済学・経済政策、企業経営理論は早めに着手して理解を進める
- 暗記科目の経営法務、経営情報システム、中小企業経営・中小企業政策は、暗記は遅めでも構わないが過去問には早めに触れておく
- 過去問アウトプット学習法は「本試験レベルを早く知る」「効率的な学習が可能」「実証済」でオススメの学習法
中小企業診断士1次試験は7科目もあり、そのどれもがそれなりに難易度が高く、楽勝というレベルではありません。1科目ずつに使える時間は限られているため、効率的な学習が必須です。そのため、この記事で紹介している過去問アウトプット学習法のような、効率的な学習方法をどんどん取り入れていって、試験対応レベルの向上と時間短縮を同時に目指していきましょう。
ここまでお読みくださいましてありがとうございました。