こちらの記事は次のようなことを知りたいという方に向けて書いています。
- 中小企業診断士試験の経済学・経済政策の特徴と対策を教えてほしい。
- 経済学・経済政策は暗記だけで対策できる?
- 経済学・経済政策の学習方法を教えて!
中小企業診断士1次試験は2ヶ月半程度の学習で合格していますので、短期合格のための学習方法には自信があります。経済学・経済政策は、理論をしっかりと理解することが合格の秘訣です。これから経済学・経済政策の特徴を解説して、私がおこなった対策を説明しますね。
経済学・経済政策の特徴
出題は1次試験のみ。割り切った学習でOK!
経済学・経済政策は中小企業診断士試験の1次試験のみで出題されます。中小企業診断士としては、経済学・経済政策の知識を理解しておくことは必要ですが、中小企業のコンサルティングを実際におこなうに当たって、経済学の知識がそのまま役に立つという状況はあまり考えられません。
そのため、実際のコンサルティングをおこなうことを想定した2次試験では、経済学・経済政策の知識が問われることはほとんどありません。
こちらの1次試験と2次試験の関係をあらわした図でもわかるとおり、経済学・経済政策は2次試験とはあまり関係ありませんね。
中小企業診断士試験対策としては、経済学・経済政策は、1次試験をパスすることができるだけの知識を得ることができればいい、ということになります。
1次試験は7科目もあり、それぞれの学習にかなり多く時間を取られますので、経済学・経済政策は1次試験の合格レベルまで達すればOKと割り切って考えて、できるだけ効率的な学習を進めていきましょう。
経済学・経済政策は暗記だけでは不十分、理論の理解が重要
1次試験の経済学・経済政策について解説します。
1次試験の経済学・経済政策は1日目の9:50~10:50の60分間でおこなわれます。中小企業診断士試験の一番最初の試験ですね。問題数は25問で、配点は1問4点となっています。基本的には60点以上を獲得することが求められますので、25問中15問を目指す必要があります。
25問中15問というのは、10問までは間違えてもいいということです。ただ一方で、15問間違えると足切りの40点ということになりますので、1問4点の重みが非常に大きいと言えます。ケアレスミスには十分に気をつける必要があります。
択一試験で1問2分40秒の時間というのは、まあまあ余裕のある方ですので、見直す時間もしっかりと取って、1問でもうっかり落とさないように気を配りましょう。
また、経済学・経済政策の特徴として、グラフや図を見て解答する問題が多いということがあります。グラフや図を理解する能力と、そこから変化した場合の状況把握、解答へとたどり着くための結論づけ、といったステップを踏んで解答する必要があります。
そのため、暗記するだけでは対策が不十分で、しっかりと理論を理解しておく必要があります。
最近は合格率が高い数字で安定、だが油断は禁物
経済学・経済政策は、内容は難しいのですが、科目合格率そのものを見てみると最近は高い水準にあります。ここ5年の推移で見ると、5年とも20%を超える合格率になっています。
この科目合格率には1次試験合格者が入っていません。つまり、成績の良い可能性の高い、合格者のデータが含まれていないことを考えると、経済学・経済政策はかなり多くの方が合格点に達しているのではないかと想定されます。
ただ、一方で6年以上前のデータを見ると8.6%、2.1%と1桁の科目合格率が2回見られます。また難易度が上がってくる可能性も否定できませんので、しっかりと学習してある程度難易度が上がっても対応できるようにしておきましょう。
出題範囲
1次試験の経済学・経済政策の出題範囲は以下のとおりです。
中小企業診断士1次試験の試験案内の「試験科目設置の目的と内容」における記載は1つにまとめられていますが、内容はマクロ経済学とミクロ経済学に分かれています。
- 国民経済計算の基本的概念
- 主要経済指標の読み方
- 財政政策と金融政策
- 国際収支と為替相場
- 主要経済理論
- 市場メカニズム
- 市場と組織の経済学
- 消費者行動と需要曲線
- 企業行動と供給曲線
- 産業組織と競争促進
- その他経済学・経済政策に関する事項
①~⑤がマクロ経済学、⑥~⑩がミクロ経済学になります。
試験の出題としては概ね半々で出題されると考えておけばいいでしょう。
そのため、まんべんなく学習しておく必要があります。
マクロ経済学
マクロ経済学は、国全体の経済活動に関する経済学です。
景気動向や物価、景気対策などの国全体の経済を対象としていて、為替相場、国際収支、雇用・物価動向等を的確に把握することで、経営上の意思決定をおこなえるようにする、というのが中小企業診断士に期待される役割ということになりそうです。
GDPの三面等価、つまり生産・分配・支出の均衡や財市場、貨幣市場、労働市場それぞれの内容とつながり、財政政策や金融政策を行なった際の市場における効果など、重要論点をしっかりと把握しておくことが大切です。
ミクロ経済学
ミクロ経済学は、個人消費者や企業の経済活動を扱います。つまり、消費者が商品の購入を決定する際や、企業が生産のする際の意思決定がどのようにおこなわれていくのかといった、マクロ経済学に比べると狭い範囲での経済活動が対象になります。中小企業診断士のコンサルティングには、こうしたミクロ経済学の観点がある程度は必要ということなのでしょう。
ミクロ経済学の基本は、消費者による需要と生産者による供給の関係を理解することです。日常生活している上では気づかないような、需要と供給のバランスによって価格が決定されていくプロセスを、グラフという目に見える形で表します。この需要の均衡について、消費者サイドと生産者サイドの特徴とともにしっかりと把握していければ、ミクロ経済学の理解は深まるでしょう。
経済学・経済政策の対策
経済学・経済政策の内容について説明しましたが、ここからは合格のための対策について述べたいと思います。
過去問アウトプットで過去問を解きながら理解を深める
経済学・経済政策は、理論をテキストで学習しても、なかなか問題が解けるようにはなりません。これは、いくら理論が頭に入っていても、出題される際に与えられる条件に頭がついていけないからです。
例題で見てみましょう。令和2年の中小企業診断士1次試験経済学・経済政策第12問です。
下図では、需要曲線Dと供給曲線Sの交点Eに対応する生産量Q0のもとで市場全体の経済余剰が最大化し、資源配分が効率的になる。反対に、Q0以外の生産量では、資源配分は非効率的になる。この図に関する記述として、最も適切なものを下記の解答群から選べ。
〔解答群〕
ア 生産量がQ1のとき、点Eの場合と比べて、消費者余剰が三角形EFGの分だけ少なくなるので、資源配分は非効率的になる。
イ 生産量がQ1のとき、点Eの場合と比べて、生産者余剰は四角形P1FJP0の分だけ多くなるが、総余剰では三角形EFJだけ少なくなるので、資源配分は非効率的になる。
ウ 生産量がQ2のとき、点Eの場合と比べて、消費者余剰は四角形P0EIP2の分だけ多くなるが、総余剰では三角形EHIだけ少なくなるので、資源配分は非効率的になる。
エ 生産量がQ2のとき、点Eの場合と比べて、生産者余剰が四角形P0EGP2の分だけ少なくなるので、資源配分は非効率的になる。
この問題では、
- 生産者余剰と消費者余剰の基本的な理解
- 生産量が増減した際の生産者余剰と消費者余剰の変化
- 資源配分が効率的な生産量から移動したときの非効率(マイナス余剰)
といった論点を理解していなければいけないのですが、もし理論として理解していても、グラフ上でどう表すか?となるとわからなくなってしまうことが多いと思います。これが、経済学・経済政策が暗記だけでは対応できない理由です。
理解するためには、実際にグラフを見て線で囲んでみて、生産量がQ0からQ1、Q2動いた時に生産者余剰、消費者余剰、総余剰がどのように変化していくかを見ていかなければいけません。
この例題では、解答は(ウ)になるのですが、 生産量がQ2のときに、下のグラフのように余剰が変化することを描けなければ解答できません。
生産量Q0の状態
消費者余剰:AP0E
生産者余剰:BP0E
総余剰: ABE
生産量Q2の状態
消費者余剰:AP2I
生産者余剰:BP2G - HGI
総余剰: ABE - EHI
問題を見て、何とか考えて解答した後で、解説を読んで内容を確認すると、理解度は大きく向上するはずです。一度では内容を理解できないかも知れませんが、過去問を繰り返し解いてみると頭に残っていきます。これを学習初期から始めておくと、本試験までには相当考える力がついているはずです。
私が強調したいのは、この考える力です。経済学・経済政策は暗記だけでは不十分で、こうした問題を与えられた際の思考力を鍛えておくことが非常に重要です。
本試験で過去問と全く同じ問題が出る可能性は低いかも知れませんが、こうした練習をしておくことが重要であると私は考えます。
これを私は過去問アウトプット学習と呼んでいます。
私は、経済学・経済政策についてはまったくの初学だったのですが、2ヶ月半で1次試験を完全合格(全科目60点以上)かつ平均78点という高得点で突破していますので、この学習方法は間違っていなかったと考えています。他の多くの資格試験でも実績を出しています。
過去問アウトプット学習については、具体的な方法や、繰り返す回数などをこちらの記事で詳しく説明していますので、よろしければご参照ください。
なお、過去問学習としては、私はこちらのTACの過去問集を使用しました。5年分の過去問と詳細な解説が載っていますのでオススメです。
中小企業診断士 最短合格のための 第1次試験過去問題集 (4) 経済学・経済政策
TACに限らなくても構いませんが、必ず問題の解説が詳しく書いてある過去問を選ぶことが重要です。特に経済学・経済政策の過去問アウトプット学習では、解説を読むことで知識の底上げを狙いますので、解説がきちんとしていなければ意味がありません。
練習問題も活用して知識の幅を広げておく
過去問アウトプット学習だけでは、知識の幅としても練習量としても少し不十分かな、と思います。過去問といっても、5年分では25問×5年=125問ですから、網羅的な学習には少し足りないと考えます。
できればTACのような予備校が出版しているオリジナル問題集を解いていくのがオススメです。過去問と同じような問題も含まれていますが、問題集独自の問題もありますので、そこでさらに知識を広げておくのは試験対策として有効です。
私も使用しましたが、問題集でのアウトプット学習としては、こちらのTACのスピード問題集の活用することがオススメです。こちらも過去問同様、解説がしっかりとしています。
中小企業診断士 最速合格のための スピード問題集 (4) 経済学・経済政策
なお、問題集としては、必ずしもTACである必要はなく、
- 分野別の論点をしっかりカバーしている
- 問題のクオリティがそれなりに高い
- 解説が詳細に書かれていてインプット学習に使用可能なレベルになっている
という条件を満たしたものにすれば何でもOKです。
過去問・問題集とともにポケットブックで論点を整理
経済学・経済政策では、暗記に頼ることはできませんが、論点の整理としてポケットブックの活用をオススメします。こちらのリンクになります。
中小企業診断士 最速合格 要点整理ポケットブック 第1次試験 1日目
スピードテキストの方がカバーしている内容が広いですし、持っておいても損はないですが、経済学・経済政策の場合、テキストで細かな知識を学習すると言うよりは、グラフを見て曲線がこう動いたら、こうなるといった動きを理解することに時間を使った方がいいと考えます。
サイズが小さくて、持ち運びにも便利なポケットブックを必要な時にすぐに取り出して知識を確認する方がいいかな、と私自身は思います。
事実、私はスピードテキストを使用しておらず、それでも合格することができています。
まとめ
以上、経済学・経済政策の概要および対策を述べてきましたがいかがでしたでしょうか。ここでまとめておきたいと思います。
- 1次試験のみ対策必要な科目であり、時間をかけ過ぎない学習を考えるべき
- 科目合格率はここ5年とも20%超と高め安定。ただし診断士試験はいきなり難易度が上がることもよくあるので油断は禁物
- 過去問アウトプット学習で理論をしっかりと抑える。特にグラフ上での動き(曲線が動くと他にどのように影響するか?など)の理解が重要
- 過去問をやった後は、問題集でアウトプット練習しつつ理解を深めていく
経済学・経済政策は、最初の方で述べていますが、1次試験のみの科目ですので、あまり深入りせず、ある程度割り切ることが重要と考えます。
1次試験は7科目もあり、それぞれかなりの時間を要しますので、効率的な学習を意識することが大事です。そのため、経済学・経済政策では過去問学習を中心にして、理論の習得と問題慣れを同時進行していくことをオススメしたいです。
ここまでお読みくださいましてありがとうございました。