中小企業診断士

中小企業診断士資格とMBAではどちらを取得するべきか? 取得にかかるコストと活用手段を徹底検証!

こちらの記事は次のような方のニーズに応えるために書いています。

  • 中小企業診断士は日本版MBAと言われるけど、本当にそうなの?
  • 中小企業診断士資格とMBA、どちらを取得するのがいいと思う?
  • 中小企業診断士とMBA、どちらが給料アップにつながる?
まっすーです。中小企業診断士試験他多くの資格に合格した実績をベースに数々の資格試験の合格アドバイスをしています。
私は多くの資格試験に挑戦した経緯から、資格の価値というものを非常に重視しています。
結論はどちらも非常に役に立つ資格、ということになりますが、内容はまったくと言っていいほど違います。わかりやすく比較しながらご説明しますね。

中小企業診断士とMBAの比較 ~概論~

中小企業診断士とは?

中小企業診断士は、簡潔に言うと中小企業の経営コンサルタントです。
もう少し詳細に言うと、「中小企業支援法」第11条に基づき、経済産業大臣に登録された中小企業の経営課題に対応するための診断・助言を行う専門家です。

中小企業には様々な経営課題があります。
経営体力の懸念、人材不足、後継者不足、労働生産性の低さ、市場環境の変化への対応力・・枚挙に暇がありません。

そうした様々な経営課題は、中小企業の社長や経営陣だけでは対応しきれません。かといって、商工会議所など公共の支援機関でサポートするにも限りがあります。
そのため、試験などで一定の専門知識をもっていると認めた人を、中小企業診断士として名乗ることを認めることで

ですが、中小企業の経営コンサルタントは資格がなくてもできます。中小企業診断士というのは、あくまでもその名前を名乗ることができる、名称独占資格です。ここが中小企業診断士資格が本当に意味があるの?という疑問が出てくる理由になると思います。

ちなみに中小企業診断士にはほぼ独占業務といえる業務がありまして、下記の環境省通知によれば、産業廃棄物処理業診断で一定の場合に提出が必要な診断書は中小企業診断士が作ることがほとんどのようです。逆に言えば独占業務的なものはこれくらいです。

産業廃棄物処理業及び特別管理産業廃棄物処理業並びに産業廃棄物処理施設の許可事務等の取扱いについて(通知)

4 経理的基礎(6) ⑧に中小企業診断士の記載があります。

MBAとは?

MBAは、Master of Business Administrationの略称です。日本語では経営学修士と訳しますね。経営学の大学院修士過程を修了すると与えられる称号です。

Bachelor:学士(=大卒)、Master:修士、Doctor:博士という区分の内のMasterですから、MBAというのは学歴の一つです。

ですがこのMBA、欧米企業ではCEOの4割がMBAホルダーといいますから、MBAを取得するのが社長への近道、と言っても過言ではなさそうです。

中小企業のコンサルタントである中小企業診断士に対して、MBAはどんな資格?といえば企業を経営するための経営学を専門的に学んだことを証明する学位ということになるでしょうか。

最近では、日本でも経団連が令和3年春季労使交渉の企業向け指針で、ジョブ型雇用制度の積極的な導入を呼びかけたことがニュースになっていますが、欧米企業ではジョブ型雇用制度が前提となっています。

経営者というのは、会社経営をする専門職ですから、ジョブ型雇用制度の下ではそれを専門的に学んだMBA取得者が経営陣に入るのは当然です。

MBAはまさに、会社を経営するための学位、ということになります。

中小企業診断士とMBAの比較一覧表

こうした違いのある中小企業診断士とMBAですが、ここでは各項目につき表形式で比較してみます。

なお、中小企業診断士は日本版MBAと言われることがありますが、私としての考えは、学習科目は確かに似たものもあり、

  • 中小企業診断士は中小企業の経営診断に必要な知識の習得+実務補習によるコンサルティング能力の養成
  • MBAは企業経営をおこなう専門家としての実務家能力の養成

という部分である程度重なる部分はありますが、MBAはあくまで学位であり中小企業診断士の資格とは本質的に異なるため、中小企業診断士資格者をMBAホルダーと同じように見るのは、私としては違うと思います。

中小企業診断士とMBAの比較 ~検証と結論~

まずは結論!

それでは中小企業診断士資格とMBAどちらを取得するのがいいか。
結論からいきます。

まっすーの結論
  • 海外有名MBAを取得できるなら間違いなくMBA、それ以外の海外MBAでも十分検討の余地あり
  • 国内MBAと中小企業診断士ならば中小企業診断士

です。
比較をしてみた私の感想として、MBAをひとくくりにしてしまうのが無理がありました。

国内MBAと中小企業診断士はコスパの面で私は中小企業診断士に軍配が上がると考えますが、様々な観点から検証してみます。

検証① 価値

MBAは学位

MBAというのは学位です。

例えば日本でだってそうですが、東京大学法学部と○○大学法学部(具体例は特にありません)って同じしょうか?
学位以上はまったく同じ法学士です。ですが・・・まったく違いますよね。

大学であれば、ハーバード大学と東京大学にそれほどの差はないのかもしれません。
国際人材養成という観点からは計り知れない差があると思いますが、評価をする角度でこのあたりの差は広がったり縮まったりすると思います。

ですが、MBAになってくると海外有名大学院と有名ではないが海外大学院、そして国内大学院ではそれぞれの間でも相当な差があります。

これは、平成28年度「先導的経営人材養成機能強化促進委託事業」による「国内外の経営系大学院及び修了生の実態並びに産業界の経営系大学院に対するニーズ等に関する調査」という興味深い調査が出ています。

国内外の経営系大学院及び修了生の実態並びに産業界の経営系大学院に対するニーズ等に関する調査

詳細なレポートはリンク先で見ていただきたいのですが、
海外大学院(回答率10%程度とサンプル数が少ないですが)では、
「就学時と同じ勤務先で就業」33%<「転職・起業」38%
であるのに対し、国内大学院は
「就学時と同じ勤務先で就業」55%>「転職・起業」26%
と、せっかくMBAを取得しても転職・起業などには必ずしも結びついていません。

中小企業診断士は名称独占資格

中小企業診断士資格は先ほど紹介したように、中小企業の経営診断をするコンサルタントの国家資格です。名称独占資格であり、コンサルタントの仕事自体は中小企業診断士資格を保有していなくても、誰でもできます。

要は実力主義ということですが、中小企業診断士資格をとっても意味がないとか、そういった話が出てくるのはこれが原因です。

とはいえ、中小企業診断士が名称独占資格であるのと同じように、国内MBAも学位を名乗れる程度なのかもしれません。

検証② コスト対効果

海外MBA

海外MBAはコストが非常に高く、会社が派遣する場合を除けば、当然ながら会社を辞めて入学することになりますので、人生を賭けた取り組みになる一方で、海外MBAのプログラム自体が起業と提携していたり、修了後の就職には非常に強いと言えそうです。

私は海外勤務経験があるのですが、MBAホルダーというのはまさに経営者になるためにいる存在!という感じでした。もちろん、それは彼らが数々の企業を渡り歩いてキャリアアップしてきた、ということもあるのでしょう。

MBAさえ取れば万事解決というわけではありませんが、海外勤務(日本からの出向とかではなく)ができるレベルの英語力があり、かつ名の通ったMBA保有であれば、数千万円稼ぐことは当然のようにできると思います。

海外では専門職である経営者は、そのポジションに立つことができなければキャリアも積めませんので、そのポジションへ挑戦する機会を得られる海外MBAというのは非常に有効な学位です。

取得費用を超える収穫を得ることができる確率は高いでしょうし、十分投資対象になると思います。

国内MBA

華々しい海外MBAと比較して、国内MBAはどうでしょうか。

私は、国内MBA自体が国際的にはマイナーな存在であると考えます。国内MBAを取得して、それが海外転職に役立つということがないとは言えないのでしょうが、ほとんどないのかと思います。理由は、国内MBAのレベルを証明する術があまりないからです。

一方で、国内で活用する場合はどうでしょう。

  • 社内での昇進に役立つか?給料は上がるか?
    →役立つかもしれません。ただし職能給制度が浸透している日本企業の場合、専門職スキルは重視されず、社内で成果を出すことに加え、人間関係も大いに出世に影響します。
  • 転職に役立つか?
    →役立つかもしれません。ただし職能給制度が浸透している日本企業の場合、専門職スキルは重視されず、前職の企業規模・職務経験の方が重視されることが多いです。
  • 企業に役立つか?
    →役立ちます。ただし企業が成功するかとは別問題です(ドメイン、経営資源等)。

間違いなく役立つ。ただし効果は保証できません。

となります。なんでもそうだと思いますが、学習してスキルを向上させることはどんな場合でも必ず役立ちます。加えてMBAの過程で習得する知識やスキルは必ずや仕事のレベルを上げるでしょう。ただ、それが外部への効果的なアピールになるかは別問題です。

費用は数百万円、時間は1~2年間、ここまでやったら何かしらの効果に期待してしまうかもしれませんが、かけたコストに対して見合うだけの効果があるかは未知数ということを理解しておく必要があります。

これは資格取得でも同じようなものですね。

中小企業診断士

中小企業診断士資格が仕事で役に立つ、という人はほとんどいないのではないでしょうか。資格手当が出るとか、そういったレベルので給与アップはあるかもしれませんが、資格そのもので仕事をするわけではありませんので、名称独占資格であるとおり、肩書がつくという程度だと思います。

国内MBAと同様の観点で考えると、こうなります。

  • 社内での昇進に役立つか?給料は上がるか?
    →役立つかもしれません。ただし知名度の低い中小企業診断士は、難易度を分かる人が少なく、資格が評価されるかは未知数です。出世・昇給には社内で成果を出すことに加え、よい人間関係も大いに必要です。
  • 転職に役立つか?
    →役立つかもしれません。資格が重視される転職先もないことはありません。ただし、前職の企業規模・職務経験の方が重視されることが多いです。
  • 企業に役立つか?
    →役立ちます。ただし企業が成功するかは別問題です(ドメイン、経営資源等)。

国内MBAとほとんど変わらないですね。

加えて、中小企業診断士は維持コストがかかります。5年に1回の更新です。
お金の面では理論政策研修6千円/回×5回=3万円が最低かかります。

それに加えて時間の方は、実務従事30日分が必要となります。有償・無償はともかくとして、顧客を見つけてこられる場合はまだいいですが、そうではない場合、お金を払って実務従事に参加する必要があります。

だいたい相場は6日間で5万円、30日分で25万円程度かかりますので、言い換えれば25万円払って30日分働くことになります。

維持コストを賭けられない場合、15年間の休止制度があります。ただ、これを長く続けてしまうような場合、恐らく復帰はできないでしょう。

検証③ 難易度

海外MBA

海外MBAは英語力ももちろんですが、生活環境から変える必要がありますし、人生を犠牲にして挑む必要があるため、スタート地点に立つだけでも難易度は非常に高いと言えるでしょう。それに加えて、大学院のカリキュラムは当然ハードであり、修了するのは困難といえます。

国内MBA

国内MBAも英語力を必要とする大学院が多くあると思います。仕事をしながら学習するのであれば、入学するだけでも難易度は決して低いものではないでしょう。加えてカリキュラム自体も難易度は高く、修了には相当な努力が必要であり、難しいと言えます。

中小企業診断士

中小企業診断士は、1次試験・2次試験に合格し、実務補習さえ修了すれば取得できます。学習期間は個人によって差がありますし、合格基準も年度によって変動があります。

ただ、合格率そのものは1次試験20%程度、2次試験20%程度ですから単純計算では20%×20%=4%、1次試験は2回受験できるため、実質6%程度かな、と思いますがいずれにしても資格試験としては難易度はかなり高めです。

検証④ 人脈形成

MBA

大学院に1~2年間通うわけですから、多くのカリキュラムをこなしていかなければならず、非常に忙しい中だったとしても、時には励まし合ったり、時には議論し合ったりしながらも共に過ごした仲間との強い絆は、大学院を終了した後も続いていくことでしょう。

この通常の社会人生活では得られない人脈は、決してお金に変えられない価値があるのではないかと考えます。

中小企業診断士

中小企業診断士は独学や通信教育で学習を進めた場合、人脈形成はまったくなされません。
予備校に通うような場合は、クラスの仲間のような関係はできるかもしれませんが、それもほぼ座学となる中小企業診断士講座の場合は、積極的に交流しない場合、人脈形成にはそれほどつながらないかもしれません。

中小企業診断士の場合は、やはり合格後の実務補習が大きいと思います。
中小企業診断士資格を取得したといっても、実戦経験のない診断士の卵が、指導員がいるとはいえ、いきなり中小企業のコンサルという最前線に放り込まれます。

たった5日間の実務補習期間でヒアリングから経営診断報告書の作成、経営陣へのプレゼンという難関に挑む仲間とのつながりは、かけがえのないものです。

特に15日間のコースを選択した場合は同じ仲間とこの経営診断を3回実施するのですから絆の深まり方も強いようです。

加えて、中小企業診断士は中小企業診断士協会に入会して各種研究会やイベントに参加していくことで人脈の輪を広げていけるところも触れておきたいです。

中小企業診断士でも十分に人脈形成は可能と言えそうですが、MBAに比べると自ら積極的に動く必要があるといえるかもしれません。

検証⑤ イメージ

これはあくまでもイメージの話なのですが、中小企業診断士とMBAではやはりMBAに軍配が上がると思います。

経営学修士と書くとただの学位なのですが、MBAというとなんかできる感じがしませんか?私が横文字に弱いだけなのかもしれませんが。

中小企業診断士は、中小企業支援法が根拠となっている国家資格です。
中小企業をサポートする戦力が公的機関だけでは足りない、だから有資格者にサポートしてほしい、という考えから資格制度を設立しているのですから、「中小企業」という言葉が入るのは当然です。

ですが、中小企業を地味だとイメージされてしまう場合、残念ながらかっこいいイメージにはならないと思います。世の中には素敵な中小企業も本当にたくさんあるんですけどね。

あくまでもイメージですので実態としては中小企業診断士は素晴らしい資格だと思います。

結論

先に結論を述べたとおり、

まっすーの結論
  • 海外有名MBAを取得できるなら間違いなくMBA、それ以外の海外MBAでも十分検討の余地あり
  • 国内MBAと中小企業診断士ならば中小企業診断士

となります。

海外MBAから外資系企業へのルートが開ければ、日本人としての標準的な収入を大きく超えることができると思います。洗練された英語力と覚悟と実力と運が必要ですが、可能性は大きいと言えるでしょう。

この道を目指せるのであれば、あなたは選ばれた人です。迷わず選ぶべきです。
日本企業からの出向という立場ですが、海外経験がそれなりにある私としては、真剣にそう思います。

一方で国内MBAと中小企業診断士ですが、これまで5つの観点で比較をしてきました。

人脈形成を同じレベルと見てしまうのがいいのか、という議論はあるかと思いますが、結果的に私としてはコスト対効果の比較を重視するべきだと思います。
恐らくこの選択に悩むのは社会人である方が多いと思いますが、国内MBAはかけるコストに対する効果が正直見合わないと思います。

日本でももう少しジョブ型雇用制度が浸透して、経営者という専門職が一般的になれば変わるかもしれませんが、現時点では国内MBAを取ったと言っても、「すごいね」の一言で終わりということも考えられます。

2003年の論文(Koike and Inoki(2003)p.43, Table 3-4)ですが、日本のCEOの内、MBAホルダーは約1%しかいない、という調査結果もあるようです。

また、撤退コストもやはり考えておかなければならないと考えます。不退転の決意で大枚をはたいて、仕事や家庭環境の変化で挫折を余儀なくされることもあり得る話です。

いつでも撤退できる中小企業診断士試験にチャレンジしてみるのも一つの選択肢ではないかと思います。

もちろん、中小企業診断士もMBAも取得の過程で何を身につけるか、取得後に何がしたいか?が重要なので、それが決まっていなければどちらも意味がないと思います。

私の結論は中小企業診断士ですが、国内MBAを考える方もいろいろな角度から検討されて決められることをオススメいたします。

以上、ここまでお読みいただきましてありがとうございました。

ABOUT ME
まっすー
中小企業診断士のまっすーです。 社会保険労務士やITストラテジストなど、多くの難関資格に合格した実績をベースとした資格試験の学習方法、ExcelマクロやPythonを活用した自動化の推進、経営に役立つ管理会計の理論解説、ITを活用した経営資源の有効活用などの情報を発信しています。
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