中小企業診断士

中小企業診断士1次試験 財務・会計の勉強法 過去問中心の学習でOK!2次試験を意識して理解を深めよう

こちらの記事は次のようなことを知りたいという方に向けて書いています。

  • 中小企業診断士試験の財務・会計の特徴と対策を教えてほしい。
  • 経営法務を受けるために日商簿記検定は受験したほうがいい?
  • 財務・会計の学習方法を教えて!
まっすーです。中小企業診断士試験他多くの資格に合格した実績をベースに数々の資格試験の合格アドバイスをしています。
中小企業診断士1次試験は2ヶ月半程度の学習で合格していますので、短期合格のための学習方法には自信があります。財務・会計は中小企業診断士試験で最も重要な科目と考えています。これから財務・会計の特徴を解説して、私がおこなった対策を説明しますね。

財務・会計の特徴

1次・2次ともに出題される中小企業診断士試験最重要科目

私は、財務・会計は中小企業診断士試験で最重要科目であると考えます。理由は、以下の2つが挙げられます。

  • 1次試験でも2次試験でも出題される
  • 財務・会計の知識がないと2次試験の事例IVはまったくできない可能性がある

1次試験科目で2次試験でも必要となる科目としては、以下の図のとおり、企業経営理論、運営管理、財務・会計の3科目が挙げられます。企業経営理論や運営管理は 、最悪その知識が足りなかったとしても(試験当日用語をど忘れした場合など)、何とか記述を工夫することで解答は可能ですが、財務・会計の場合、計算を含むため、知らなければ解答にたどり着けない可能性が高くなってしまいます。企業経営理論、運営管理、財務・会計のいずれも重要ですが、問われる知識という意味では、財務・会計は最も深いレベルまで理解している必要があります。そのため、1次試験の段階である程度財務・会計について理解しておくことが、2次試験対策に役立ちます。

財務・会計は計算問題が多く、暗記ではなく理解が重要

ここからは、1次試験の財務・会計について解説します。

1次試験の財務・会計は1日目の11:30~12:30の60分間でおこなわれます。問題数は25問で、配点は1問4点となっています。基本的には60点以上が合格点となりますので、25問中15問以上の正答を目指す必要があります。

25問中15問というのは、10問までは間違えてもいいということになりますが、15問間違えてしまうと足切りの40点ということになりますので、1問4点の重みはかなり大きいです。計算問題が多く出題される財務・会計では、計算ミスで落としてしまうのは非常に大きな失点になりますので、必ず見直しをおこない、取りこぼしがないようにしましょう。

時間としては、1問2分24秒で解答することになりますが、計算問題があるため時間的には十分とは言えません。特に焦ってくると簡単な計算であっても間違えてしまったり、公式が浮かばなくなったり、想定外のできごとが起こる可能性があります。

一度見て難しいと思う問題はどんどん飛ばして、できるだけ時間の余裕を作っていきましょう。比較的簡単な問題を先に終わらせてしまい、余った時間で難問に挑むのが試験マネジメントとしては有効です。

どれも1問4点ですので、どれだけ難易度が高かろうと、簡単であろうと4点は4点です。取れるものから取っていくのが試験の鉄則です。ハマってしまって時間を無駄にしてしまうことがないようにしましょう。

財務・会計は前述のとおり計算問題が多く、暗記だけで対応することはできません。

もちろん、計算するための公式は暗記で覚える必要があるのですが、いくら公式を覚えていても、その公式をどのように活用して計算するかは、内容の理解が十分にできていないと短い試験時間内に素早く対応することはできません。

過去問などで演習を多くこなして、こういう問題のときはこうする、といった対応を機械的にできるくらいのレベルになっておくといいですね。

最近は合格率の変動が激しい

財務・会計の科目合格率を見てみましょう。ここ5年で見た場合、科目合格率は10%を下回ったのが1回、20%を上回ったのが2回出現しています。グラフにしてみるとわかりますが上下変動が激しいですね。

ちなみに私が合格した平成24年度は3.8%の合格率だったのですが、正直それほどの難易度という印象はありませんでした。ただ、計算問題の多い財務・会計では、少し捻った応用問題の数が増えるだけで科目合格率へ与える影響は大きいと見られ、暗記に頼らない基本的な内容のしっかりとした理解が、難易度の上昇に対する備えになることが考えられます。

なお、この科目合格率には成績の良い可能性の高い、合格者のデータが含まれていないことに注意が必要です。合格者を含めた財務・会計の科目合格率はもっと高いと予想できます。

出題範囲

1次試験の財務・会計の出題範囲について確認しましょう。
以下の12個が出題範囲として挙げられていますが、財務・会計は試験範囲としては非常に広く、初学から合格レベルに至るまでに時間がかかるのが難点です。

  1. 簿記の基礎
  2. 企業会計の基礎
  3. 原価計算
  4. 経営分析
  5. 利益と資金の管理
  6. キャッシュフロー(CF)
  7. 資金調達と配当政策
  8. 投資決定
  9. 証券投資論
  10. 企業価値
  11. デリバティブとリスク管理
  12. その他財務・会計に関する事項

私は財務会計から管理会計まで幅広い業務経験があるからわかるのですが、これらの論点は中小企業の経営診断をするには非常に重要である一方で、内容をすべて理解するのは相当難しいです。問われるのは基本的なことばかりとはいえ、企業の経理部門に所属して、ある程度年数をかけて理解できるような内容ですね。

それだけに、中小企業診断士に合格できる方は企業の経理部門で働くことも可能と言えるくらいの能力を持っている、とも言えるかもしれません。

それくらいにハードルの高い財務・会計ですが、初めて学習するのであれば、あまりたくさん手を広げず、頻出論点を何度も繰り返して学習して理解を深め、それから範囲を広げていくほうがいいと考えます。

これからそれぞれの論点について解説していきます。

簿記

「①簿記の基礎」が該当します。財務会計に含めてもいいのですが、ここでは分けています。

複式簿記で必要となる仕訳の知識、および試算表、精算表の作成やBS、PLの作成、決算仕訳などの知識ですね。初めて学習する方はここだけでも戸惑ってしまうかも知れません。財務会計、管理会計、ファイナンスすべてこれが理解できているのが前提になるため、理解しておく必要はあります。

日商簿記検定3級の知識があればひと通りの対応はできますが、中小企業診断士試験ではもう少しレベルが上の問題も出ています。

財務会計

「②企業会計」の基礎が該当します。

BS、PLに加えキャッシュフロー計算書、企業結合(合併、分割、連結決算)、税効果会計などが含まれます。一気に難易度が上がりますね。今は日商簿記検定2級の範囲内になります。

ただ、問われること自体は簿記の試験よりは簡単な内容なので、内容の理解さえできていれば解答可能な問題も多いです。

管理会計

「③原価計算」、「④経営分析」、「⑤利益と資金の管理」、「⑥キャッシュフロー(CF)」、「⑧投資決定」が該当します。

中小企業診断士は中小企業の経営診断をおこなう立場ですので、最も重要と言ってもいい分野です。2次試験の事例IVでも主にこの分野が問われます。

そのため、財務・会計では最も力を入れたい分野です。ただ、その分理解するまでにはかなりの時間を要し、公式などがわかっていればすぐに解けるというわけでもないため、問題を解くのにも苦労が多いと思います。

日商簿記検定では1級の工業簿記・原価計算の科目が該当します。日商簿記検定では原価計算以外の管理会計分野は1級がカバーしている範囲も多いです。

ファイナンス

「⑦資金調達と配当政策投資決定」、「⑨証券投資論」、「⑩企業価値」、「⑪デリバティブとリスク管理」が該当します。こちらも中小企業の経営に関しては重要な分野ですね。

こちらは日商簿記検定というよりも、ファイナンシャルプランナーや証券アナリストの試験範囲になっているような分野です。

財務・会計の対策

財務・会計の内容について説明しましたが、ここからは合格のための対策について述べたいと思います。

範囲が広いため、過去問学習で出題範囲を把握していく

財務・会計は範囲が非常に広いです。

たとえば財務会計の分野で、会計基準等の細かい知識まで目を向ければ、本当にいくらでも手を広げることが可能です。ですが、最も重要な科目とはいえ、7科目もある中小企業診断士試験において、財務・会計はあくまでも1科目でしかありませんので、あまりに多くの時間をかけてしまうのはよくありません。

そのため、ある程度論点を絞って学習をスタートしていくことが重要です。何をどこまでやればいいのかわからず、目標がわからずに学習を進めていくのは苦痛ですよね。そこで、まず本試験のレベルの問題に挑戦して、どれくらいのレベル感かを把握しておくことを私は重視しています。

もちろん、最初から問題が解けるわけではないのですが、問題をやってみて、解説を読んでみて解き方を理解していく。基本が出来なければ何もできない、という意見もあるかも知れませんが、財務・会計で出題される問題はごく一部の難問を除けば、とても素直な基本問題が多いです。解説を読めば、どう解けばいいかという理解をすることまでは可能だと思います。

まずは過去問に取り組んで、自分のレベルを知り、そこからどの程度のレベルまで行ければいいかを想定しながら学習していく。この過去問を優先して学習していく学習法を、私は過去問アウトプット学習と呼んでいます。

過去問アウトプット学習については、具体的な方法や、繰り返す回数などをこちらの記事で詳しく説明していますので、よろしければご参照ください。

過去問インプット学習理論!~短期間高得点合格するための効率的な資格試験勉強法を公開~この記事では、どうすれば効率的に資格試験の学習ができるか知りたい!短時間で資格試験に合格したい!過去問はいつから手をつけるのがいい?参考書で学習した後?それとも試験直前?といった疑問に回答しています。...

過去問学習としては、私はこちらのTACの過去問集を使用しました。5年分の過去問と詳細な解説が載っていますのでオススメです。

中小企業診断士 最短合格のための 第1次試験過去問題集 (2) 財務・会計

過去問はTACに限らなくても構いませんが、過去問アウトプット学習で必ず問題の解説が詳しく書いてある過去問を選ぶことが重要です。TACの過去問集は各選択肢についての解説が詳細に記載してあり、初めて見る問題でも解くための考え方を知ることができ、かつ周辺知識についてもカバーしていますので、過去問アウトプット学習に最適と考えています。

練習問題で知識の幅を広げる

過去問アウトプット学習で、どのくらいのレベルの問題が出題され、自分がどれくらいのレベルにあるのかがわかったところで、演習量を増やしていきましょう。

まずは、TACのような予備校が出版しているオリジナル問題集を解いていくのがオススメです。過去問と同じような問題も含まれていますが、問題集独自の問題もあり、体系的に学習レベルを上げていくことが可能です。

私も使用しましたが、問題集でのアウトプット学習としては、こちらのTACのスピード問題集の活用することがオススメです。こちらも過去問同様、解説がしっかりとしています。

中小企業診断士 最速合格のための スピード問題集 (2) 財務・会計

なお、問題集としては、必ずしもTACである必要はなく、

  • 分野別の論点をしっかりカバーしている
  • 問題のクオリティがそれなりに高い
  • 解説が詳細に書かれていてインプット学習に使用可能なレベルになっている

という条件を満たしたものにすれば何でもOKです。

さらなる財務・会計対策本にも着手

私はテキストをただ読むだけの学習はあまり推奨しません。テキストを読むだけではその学習の習熟度がわからないからです。特に財務・会計のような計算問題を多く含むような科目では絶対的な演習量を増やすことが合格の近道です。

こちらもTACの本になりますが、こうした財務・会計の計算問題に特化した問題集を解いておくことも、対策としては重要です。特に計算問題は解き方を一度理解しておかないと、本試験でも勘で解答するしかなくなってしまうので、できるだけ多く演習をしておきたいですね。

中小企業診断士 集中特訓 財務・会計 計算問題集 第7版

これももちろんTACの問題集でなくても問題はありません。

ポケットブックで論点を整理・補完

過去問、問題集の学習と並行して、論点の整理としてポケットブックの活用をオススメします。こちらのリンクになります。

中小企業診断士 最速合格 要点整理ポケットブック 第1次試験1日目

当然ながらスピードテキストの方が抑えている範囲は広く、持っておいても損はないですが、テキストただ読んでいくよりも、しっかりと頭に入れるという観点で学習するためには、ポケットブックくらいのボリュームの方がいいと考えます。

過去問や問題集での学習でも、頻出論点をかなり効率的に抑えられるのですが、それでも抜け落ちはあると考えられ、ポケットブックの内容を理解できていれば合格には近づけると考えます。過去問、問題集では問題を解いていって覚える、ポケットブックでは暗記するというように、頭にきちんと残るような学習をすることを意識していくことで、頭に残していくことを取り組んでみましょう。

漫然と学習しているだけでは頭に残らないので、工夫して学習することを心がけてください。私もそうですが、資格試験などに短期間で合格する場合、こうした工夫が重要です。

日商簿記検定は財務・会計対策に有効?

中小企業診断士の財務・会計の話題になると、日商簿記検定を受験したほうがいい?受けるなら2級がいい?3級でいい?といった疑問がよく出てきます。

先に結論を言ってしまうと、中小企業診断士試験の学習としては必要ないと考えます。理由は2つあり、

  1. 日商簿記検定合格にかける労力を中小企業診断士試験対策に使った方が効果的だから
  2. 中小企業診断士試験は管理会計のレベルが高く日商簿記検定2級では足りないから

となります。以下、解説していきます。

中小企業診断士試験に労力を注いだ方がいい

もちろん、私もそうでしたが日商簿記検定1級レベルを保有している場合、財務・会計はある意味無敵レベルで対応できます(私は1級取得してから十数年経過していたので無敵というほどではありませんでしたが)。2級だったとしても、簿記、財務会計、管理会計の分野で活用可能な知識も多く、大いに役立つでしょう。

ただし、中小企業診断士資格を得るために日商簿記検定を受験しなければならないかと言うと、そんなことはありません。といいますのが、日商簿記検定3級であったとしても、中小企業診断士試験合格には回り道になってしまう可能性があるからです。

一般的な話では、日商簿記検定3級には100時間、2級には300時間程度の時間が必要なようです。連結会計などを含まない、旧2級試験であればもう少し短い時間でも合格可能だったと思います。

私の場合、3級は3日、旧2級は1週間で合格していますので、この一般的な合格時間はあくまで目安だと思いますが、いずれにしても中小企業診断士の受験対策をする大事な時期(2月または6月)に、多くの時間を割く必要のある別資格の取得はあまりおすすめできる選択ではありません。

一方で時間に余裕のある、中小企業診断士試験の前年の11月にトライする、というのは一つの選択肢かもしれません。

日商簿記検定2級までだと管理会計のレベルが足りない

例えば日商簿記検定3級について言えば、会計仕訳ができること、決算整理前残高試算表の作成から、決算整理仕訳、PL、BSの作成までができることが必要となります。このテクニックを習得するにはそれなりの練習が必要になるのですが、そのすべてが中小企業診断士試験に役立つかと言うと、決してそんなことはありません。

また、日商簿記検定2級では、工業簿記において原価計算の知識を学習しますが、この2級の原価計算自体が中小企業診断士試験で多く問われるかと言うと、そんなことはなく、あくまでも管理会計の範囲の一部となります。

中小企業診断士試験の管理会計で言えば、日商簿記検定の範囲としては、1級の方が多く、2級のレベルの学習では足りないのです。

これは、中小企業診断士では財務会計と管理会計で必要とされるレベルに差があるから、という理由に他なりません。

経営診断をする中小企業診断士は、管理会計に強くなければならないのは当然ですよね。一方で、中小企業でも、財務会計は税理士などの専門家にお任せするのが一般的ですしね。

よって、日商簿記検定は2級だと商業簿記はいいが、工業簿記は管理会計分野をカバーするには足りない、ということになってしまいます。

それでは1級を受験するのはどうか?というのは当然考えてしまいますが、答えはわかりますよね。1級は、財務会計(商業簿記・会計学)の方が中小企業診断士試験対策としてはオーバースペック過ぎてしまいます。

日商簿記検定は超オススメ資格なので別の機会に受験しよう

最初に述べましたが、私は中小企業診断士試験の受験に向けてという観点では、日商簿記検定の受験をオススメしません。

ですが、日商簿記検定自体は人生を有意義なものにするオススメ資格の一つであり、人生のどこかのステップで受験をしておくことはオススメします。

会計知識を得ておくことは、マネーリテラシーを向上させるという観点でも重要ですし、人生に大きく役立ち、かつ仕事の幅も広げられるため、非常に有用と言えますので、是非チャレンジしてみてください。日商簿記検定3級だけでもいいですし、もう少しできる、ということであれば2級まで取得できるとかなりの強みになりますよ。

まとめ

以上、財務・会計の概要および対策を述べてきました。ここでまとめておきたいと思います。

財務・会計の概要・対策
  • 1次試験でも2次試験でも問われる中小企業診断士試験最重要科目
  • 科目合格率はここ5年で大きく変動中
  • 過去問アウトプット学習で頻出論点から理解を深めていく
  • 過去問の他、問題集を活用して演習をこなして経験を積む
  • ポケットブックも活用してある程度の出題範囲を抑える
  • 日商簿記検定は中小企業診断士試験対策としてはオススメしない(資格取得自体は超オススメ)

財務・会計は中小企業診断士試験最重要科目であり、特に2次試験ではこれができないと合格からは遠ざかってしまいます。そのため1次試験の学習から過去問アウトプット学習でレベルの高い問題に早くから触れることで、経験値を上げていってください。

ここでの頑張りが、1次試験だけではなく、2次試験でも役立ちますので、どんどん問題を解いていって、レベルを上げていきましょう。日商簿記検定を受験しようと思うのであれば、その時間分財務・会計の学習をして、内容理解を深める方がいいのではないかと思います。

ここまでお読みくださいましてありがとうございました。

ABOUT ME
まっすー
中小企業診断士のまっすーです。 社会保険労務士やITストラテジストなど、多くの難関資格に合格した実績をベースとした資格試験の学習方法、ExcelマクロやPythonを活用した自動化の推進、経営に役立つ管理会計の理論解説、ITを活用した経営資源の有効活用などの情報を発信しています。
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