毎月の予算実績管理で、各部門から集めたExcelを手作業で集計していませんか?

予算と実績の差額を計算するだけでなく、部門別の比較、営業利益の分析、年間の着地見通しまで作成しようとすると、意外に多くの時間がかかります。

特に製造業では、工場や部門ごとに予算・実績の管理資料が分かれており、経営会議向けの数字をまとめるだけでも一苦労というケースがあります。

そこで今回は、月別・部門別の予算実績管理を効率化できるExcelダッシュボードを作成しました。

無料でダウンロードできるサンプルExcelを使いながら、予算実績差異の確認方法から、年間着地見通し、経営管理への活用まで解説します。

予算実績管理とは?なぜ必要なのか

予算実績管理(予実管理)とは、事前に策定した予算と実際の業績を比較し、その差異や発生原因を分析することです。

例えば、ある部門の月間売上予算が1,000万円、実績が950万円だった場合、50万円の予算未達となります。

しかし、売上が予算未達だったからといって、必ずしも営業利益も悪化するとは限りません。

売上減少に合わせて変動費が減ったり、経費削減が進んでいたりすれば、利益への影響が小さくなる場合もあります。

そのため、実務では売上だけでなく、費用や利益も合わせて分析することが重要です。

予算実績管理で確認したい3つのポイント

  • 予算達成状況:売上や利益が計画どおりに進んでいるか
  • 差異の原因:数量・単価・費用など、どの要因で差異が発生しているか
  • 年間の着地見通し:現在の状況が続いた場合、年間の業績はどうなるか

今回のExcelでは、このうち予算達成状況と年間着地見通しを、ダッシュボードで確認できるようにしています。

【無料配布】予算実績管理ダッシュボードのExcelテンプレート

今回作成したのは、製造業の管理部門を想定した予算実績管理のサンプルExcelです。

2026年の12か月、5部門、3科目(売上高・変動費・固定費)のサンプルデータを収録しています。

予算と実績を自動集計し、部門別の業績や年間着地見通しを可視化します。

主な機能は次のとおりです。

  • 部門別・月別の予算と実績を比較
  • 売上高・変動費・固定費から営業利益を自動計算
  • 累計売上・累計営業利益差異をKPIとして表示
  • 実績確定月と未確定月を分けて年間着地見通しを計算
  • 部門を選択するとグラフやKPIが切り替わる
  • 未確定月の見通し倍率を変更し、簡易シナリオ分析ができる

予算実績管理Excelを無料ダウンロード

※ Windows版Excelでの利用を想定しています。データはすべて架空のサンプルです。Power QueryによるCSV取り込み機能は、この無料版には含まれていません。

サンプルExcelのシート構成

シート名内容
予算実績データ月別・部門別・科目別の予算と実績
月次集計売上高・費用・利益の月別集計
分析ダッシュボードKPI・年間見通し・グラフ表示

手順① 予算実績データの構造を確認する

まずは「予算実績データ」シートを開いてください。

今回のExcelでは、以下の項目を管理しています。

列項目役割
A月1~12月
B部門製造1課などの部門名
C科目売上高・変動費・固定費
D予算計画金額
E実績確定した実績金額
F着地見通し確定実績と未確定月の予測
G予実差異実績-予算

金額の単位は万円です。

サンプルには、製造1課・製造2課・組立課・加工課・物流課の5部門が登録されています。

各部門について12か月×3科目のデータがあるため、合計180件となっています。

また、今回の実績データは1~9月まで入力し、10~12月は未確定月として扱っています。

手順② 売上高・費用・営業利益を計算する

次に「月次集計」シートを確認してみましょう。

このシートでは、元データを集計し、毎月の売上高・費用・営業利益を計算しています。

今回の営業利益は、説明を簡単にするため、次の式で求めています。

営業利益=売上高-変動費-固定費

例えば、ある月の売上高が1,000万円、変動費が600万円、固定費が200万円の場合、営業利益は200万円です。

また、予実差異は次のように計算します。

予実差異=実績-予算

売上高や営業利益の場合、プラスの差異は予算より良い結果を示します。

一方、費用についてはプラスの差異が費用超過を意味するため、科目によって有利・不利の判断が異なる点に注意してください。

ExcelではSUMIFS関数を活用

今回の月次集計では、SUMIFS関数を使い、月・部門・科目を条件として予算や実績を集計しています。

部門選択が「全部門」の場合はすべての部門を集計し、特定部門を選択した場合は、その部門に絞って集計する仕組みです。

部門ごとに新しい集計表を作る必要がないため、毎月の予実分析の作業を減らすことができます。

手順③ 分析ダッシュボードを操作する

続いて、「分析ダッシュボード」シートを開きます。

ここが今回のExcelのメイン機能です。

上部の黄色いセルを変更することで、対象部門や年間見通しの条件を切り替えられます。

セル設定項目初期値
B4対象部門全部門
F4実績確定月9月
I4未確定月の見通し倍率100%

例えば、B4セルを「製造1課」に変更すると、製造1課のデータだけを表示できます。

「全部門」を選択すれば、5部門合計の予算実績管理資料として利用できます。

また、F4セルで実績確定月を選択すると、どの月までを実績として扱うかを変更できます。サンプルでは実績を9月まで用意しているため、1~9月から選択してください。

手順④ KPIで予算達成状況を確認する

ダッシュボードの上部には、4つの主要KPIを表示しています。

  • 売上高・累計予算:実績確定月までの売上予算
  • 売上高・累計実績:同期間の売上実績
  • 営業利益・累計差異:累計実績利益と累計予算利益の差
  • 年間営業利益見通し:確定実績と未確定月の予測から計算した利益

管理職や経営層への報告では、膨大な数値をすべて表示するよりも、主要な指標を最初に示す方が状況を把握しやすくなります。

ただし、KPIだけでは差異の原因までわかりません。

売上が予算未達の場合は、数量と単価のどちらが影響したのかを確認するなど、必要に応じた追加分析が重要です。

手順⑤ 月別グラフで予算と実績の推移を確認する

今回のダッシュボードには、次の2つのグラフを用意しています。

  • 売上高:予算・実績・着地見通しの比較
  • 営業利益:予算・実績・着地見通しの比較

グラフを使うと、単月の差異だけではなく、年度内の推移も確認できます。

例えば、売上高が3か月連続で予算未達になっていれば、一時的な変動ではなく、受注状況などに継続的な問題がある可能性も考えられます。

一方、売上高が予算を下回っていても、営業利益が予算を上回っている場合は、原価率や固定費の状況を詳しく確認するとよいでしょう。

売上・費用・利益を組み合わせて分析することが、予算実績管理を経営判断に役立てるポイントです。

手順⑥ 年間着地見通しをシミュレーションする

毎月の予算実績管理では、過去の結果を確認するだけではなく、年間の着地見通しを更新することも重要です。

今回のExcelでは、実績確定月までの実績に、未確定月の見通しを加算して年間予測を計算します。

年間着地見通し=確定済み実績+未確定月の予測

例えば、9月までの実績が確定している場合、1~9月は実績、10~12月は予測値を使います。

見通し倍率を変えてシナリオ分析する

「分析ダッシュボード」のI4セルには、未確定月の見通し倍率を設定できます。

今回の簡易モデルでは、未確定月の予算金額に倍率を掛けて見通しを計算しています。

見通し倍率意味
90%未確定月を予算の90%と仮定
100%未確定月が予算どおりと仮定
110%未確定月を予算の110%と仮定

ただし、今回の倍率は売上高・変動費・固定費に同じ係数を適用する簡略モデルです。

実際の予算管理では、売上数量、販売単価、変動費率、固定費の増減などを分けて見通しを作ることをおすすめします。

手順⑦ 元データを変更してダッシュボードへの反映を確認する

最後に、元データを変更してみましょう。

  1. 「予算実績データ」シートを開きます。
  2. 1~9月の実績金額を1件変更してみます。
  3. 「分析ダッシュボード」に戻ります。
  4. 該当部門を選び、KPIやグラフが変わることを確認します。

今回のExcelは、関数によって元データと集計表が連動しています。

そのため、通常はデータを変更するだけで再計算され、新しい集計結果が反映されます。Excelが手動計算に設定されている場合は、再計算を実行してください。

今回のように元データを適切な形式で整理しておけば、分析対象を切り替えたり、予算実績の変化を確認したりする作業が簡単になります。

今回のExcelを自社向けにカスタマイズするには?

今回のサンプルExcelは、予算実績管理の基本機能を体験するために作成しました。

しかし、実際の会社では、部門数や勘定科目、予算・実績データの保存場所、見通しの計算方法がそれぞれ異なります。

今回のExcelをベースに、自社の経営管理業務に合わせてカスタマイズすることもできます。

① 会計システムやSAPのCSVを取り込む

今回の無料版では、Excelテーブルに入力された予算・実績データを利用しています。

これをPower Queryで拡張すれば、会計システムやSAPなどから出力されたCSVを読み込み、部門コード・勘定科目コードを整理して集計する仕組みを作れます。

毎月のCSVコピーや集計作業を減らしたい場合に有効です。

② 自社の勘定科目や部門構成に対応する

今回のExcelでは、売上高・変動費・固定費の3科目のみを使用しています。

実務では、材料費・労務費・製造間接費・販売費・一般管理費など、より詳細な勘定科目を集計することもできます。

また、工場別・事業別・製品群別など、会社の管理単位に応じた集計も検討できます。

③ 年間着地見通しを実務向けに高度化する

今回のサンプルでは、未確定月の予算に共通倍率を掛けています。

実際の業務では、売上高は数量と単価、変動費は生産数量と原価率、固定費は費目ごとの見通しで計算すると、より説明力のある年間予測になります。

必要に応じて、前月見通しとの差異や、楽観・標準・悲観シナリオを比較する機能も追加できます。

④ 経営会議用のダッシュボードへ発展させる

今回のような月別グラフに加えて、部門別ランキング、原価率の推移、利益差異の要因分析、改善アクションの進捗管理などを組み込むことも可能です。

単なる集計表ではなく、経営層が状況を把握し、意思決定につなげられる資料を目指します。

Excel・Power Queryの業務改善をご相談ください

業務改善ラボでは、製造業の原価計算・管理会計の知識と、Excel・Power Query・VBAなどを組み合わせた業務改善をテーマにしています。

「今回のExcelを自社のデータに合わせて変更したい」「毎月の予実管理資料作成を自動化したい」といったご相談も歓迎します。

大がかりな開発だけでなく、既存Excelの一部分を改善するような小規模なご相談からでも構いません。

初回のご相談では、現在のデータ項目、困っている作業、改善したい内容などをお知らせください。機密情報を含む実データは不要です。

予算実績管理・Excel業務改善について相談する

まとめ:予実管理は集計の効率化と原因分析が重要

今回は、無料サンプルExcelを使い、部門別・月別の予算実績管理ダッシュボードを紹介しました。

今回のポイントは次の3つです。

  • データを整理する:月・部門・科目ごとに予算と実績を管理する
  • 差異を可視化する:売上・費用・営業利益の予実差異をダッシュボードで確認する
  • 年間見通しを更新する:確定実績と未確定月の予測から着地を見積もる

予算実績管理の目的は、数字を集計することだけではありません。

予算と実績の差異を把握し、その原因を分析して、次の改善策につなげることが重要です。

今回の無料Excelを参考に、毎月の経営管理業務をさらに効率化していきましょう。

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まっすー
製造業の経理・業務改善を発信する「まっすー」です。原価計算・Excel・Power Query・SAP・Pythonを使って、面倒な仕事をラクにする方法を紹介しています。